突然の訃報に際し、ご遺族から「葬式の受付をお願いできないでしょうか」と頼まれたとき、多くの方が戸惑いと責任の重さを感じるのではないでしょうか。「大切な場だからこそ、失礼のないようにしたい」「でも、具体的にどんな挨拶をすればいいんだろう…」そんな不安な気持ちになりますよね。
この記事では、葬儀の受付という大役を任されたあなたが、安心して当日を迎えられるよう、挨拶の具体的な文例から受付全体の流れ、服装のマナーまで、網羅的に解説していきます。
また、受付係の立場だけでなく、弔問客として受付に行く際の挨拶マナーにも触れています。この記事を最後まで読めば、あらゆる疑問が解消されるはずです。心を込めて故人をお見送りできるよう、一緒に準備を進めていきましょう。

葬式の受付を頼まれたらまず確認すべきこと
受付係を打診されたら、挨拶の練習の前に、まずいくつか確認しておくべき大切なことがあります。これを押さえておくだけで、当日の動きが格段にスムーズになります。
誰の代理で受付をするのか
まず、自分が「誰の代理」としてその場に立っているのかを明確にしましょう。ご遺族の親族としてなのか、故人の会社関係者としてなのか、友人代表としてなのか。立場によって、弔問客への対応や言葉遣いのニュアンスが少し変わってきます。
葬儀の形式と規模
次に、葬儀の形式(家族葬、一般葬など)やおおよその参列者数を確認しておきましょう。小規模な家族葬と、数百人が訪れる一般葬とでは、受付の忙しさや対応の仕方が異なります。また、香典や供物を辞退されているかどうかの確認は非常に重要です。これは当日の対応で最も気を遣うポイントの一つだからです。
他の受付係は誰がいるのか
一人で受付をすることは稀で、通常は複数人で行います。他に誰が受付を担当するのか、事前に顔合わせや連絡先の交換をしておくと、当日の連携がスムーズになります。役割分担(香典係、芳名帳係など)を決めておくと、混乱を防げます。
【受付係向け】葬式の挨拶 基本マナーと文例集
ここからは、いよいよ本題である受付での挨拶について、具体的な場面ごとに文例を交えて解説します。基本は丁寧で簡潔な言葉遣いを心がけることです。お悔やみの場ですので、はきはきと明るく話すのは避け、落ち着いたトーンで話しましょう。
弔問客を迎える際の挨拶
弔問客が受付に来られた際の第一声です。心を込めてお迎えしましょう。
基本の挨拶
「本日はお忙しい中、ご会葬いただき誠にありがとうございます」
これが最も基本的で丁寧な挨拶です。「ご会葬」という言葉が少し難しいと感じる場合は、「お越しいただき」としても問題ありません。
天候が悪い場合の気遣いの言葉
「本日はお足元の悪い中、お越しいただきありがとうございます」
雨や雪の日には、このような気遣いの言葉を添えると、より丁寧な印象になります。
お悔やみの言葉をかけられた際の返答
弔問客から「この度はご愁傷様でございます」といったお悔やみの言葉をかけられます。その際の返答は、自分の立場をわきまえることが大切です。
遺族の代理として
「ご丁寧に恐れ入ります。遺族に代わりましてお礼申し上げます」
「恐れ入ります」
受付係は遺族の代理という立場です。そのため、個人的な感謝の言葉よりも、遺族の代わりとして返答するのがマナーです。深々と一礼するだけでも弔意は伝わります。

香典を受け取る際の挨拶
香典を差し出された際の対応です。両手で丁寧に受け取りましょう。
基本的な受け取り方
「お預かりいたします」
「ありがとうございます。ご霊前(ご仏前)にお供えさせていただきます」
「お預かりします」が最も一般的で簡潔です。「ありがとうございます」と感謝を伝えても失礼にはあたりません。
香典を辞退する場合の丁寧な断り方
「誠に申し訳ございません。故人の遺志により、ご香典は固くご辞退申し上げております。お気持ちだけ頂戴いたします」
香典辞退の場合は、特に丁寧な対応が求められます。一方的に断るのではなく、「故人の遺志で」という理由を添えることで、相手の気持ちを傷つけずに辞退することができます。
芳名帳への記入をお願いする際の言葉
香典を受け取った後、芳名帳(芳名カード)への記入をお願いします。
「恐れ入りますが、こちらにお名前とご住所のご記入をお願いいたします」
記帳場所を指し示しながら、丁寧にお願いしましょう。会社名義の場合は、「お名刺を頂戴できますでしょうか」と伺っても良いでしょう。
返礼品(会葬御礼)を渡す際の言葉
記帳が終わった方へ、返礼品をお渡しします。
「こちら、供養のしるしでございます。お納めください」
「ささやかではございますが、御礼の品でございます」
手提げ袋などがある場合は、「袋にお入れしますね」と一言添えると親切です。
【弔問客向け】葬式の受付での挨拶とマナー
今度は視点を変えて、弔問客として参列する際の受付でのマナーと挨拶です。受付係の方も遺族の代理として大変な役目を担っています。簡潔に、そして心を込めて挨拶をすることが大切です。
受付での基本的なお悔やみの言葉
受付に着いたら、まずはお悔やみの言葉を述べます。
- 「この度はご愁傷様でございます」
- 「心よりお悔やみ申し上げます」
受付の方に長々と話しかけるのは避けましょう。 受付は混み合うことが多いですし、受付係は多くの弔問客に対応しなければなりません。簡潔に挨拶を済ませ、速やかに次の手順に進むのがマナーです。
香典の渡し方と言葉
お悔やみの言葉を述べた後、香典を渡します。
- ふくさから香典袋を取り出します。
- 相手が表書きを読める向きにして、両手で差し出します。
- 「ご霊前(ご仏前)にお供えください」と一言添えて渡します。
事前にふくさから出しておくのはマナー違反です。受付の前で、落ち着いて準備しましょう。
記帳の際のマナー
芳名帳への記帳は、丁寧な字で書きましょう。代理で参列した場合は、上司などの名前の横に「(代)」と書き、その下に自分の名前を小さく書き添えます。夫婦で参列した場合は、夫の姓名の横に妻の名前だけを書くのが一般的です。
葬式の受付係、挨拶以外の仕事内容と流れ
受付係の仕事は挨拶だけではありません。当日の流れを把握して、他の係と連携しながらスムーズに進行させることが求められます。
葬儀開始前の準備
開始時刻の30分〜1時間前には会場に到着し、準備を始めます。
備品の確認
- 芳名帳、筆記用具(ペン、筆ペンなど)
- 香典盆、または代わりの黒いお盆
- 返礼品、手提げ袋
- 会場の案内図
筆記用具はインクが切れていないか、予備があるかを確認しておくと安心です。
会場の案内の確認
弔問客から「お手洗いはどこですか?」「式場はどちらですか?」と質問されることがよくあります。事前に会場のレイアウトを把握しておくと、スマートに案内できます。

受付中の流れ
弔問客が来始めたら、役割分担に従って対応します。
- 弔問客を迎える:「ご会葬ありがとうございます」と挨拶。
- 香典を受け取る:「お預かりいたします」と言って両手で受け取る。
- 芳名帳へ記帳を依頼する:「こちらにご記帳をお願いします」と案内。
- 返礼品を渡す:「供養のしるしでございます」と渡す。
この一連の流れを、弔問客一人ひとりに対して丁寧に行います。
葬儀終了後の対応
葬儀が始まったら受付を閉めます。その後、最も重要な仕事が待っています。
香典の管理と引き継ぎ
お預かりした香典とお金の計算は絶対に受付係だけで行わず、遺族や会計係など、複数の人と一緒に行います。金額を確かめ、香典袋の表書きと照合し、リストを作成します。そして、責任者(喪主や親族代表)に確実に引き継ぎます。「確かに引き継ぎました」というサインをもらっておくと、後のトラブルを防げます。
遺族への報告と挨拶
最後に、遺族へ「滞りなく受付を済ませました」と報告し、「お疲れ様でございました」と労いの言葉をかけて退出します。
押さえておきたい!葬式の受付係の服装と持ち物
受付係は「遺族側の人間」と見なされます。弔問客を迎える立場として、服装や持ち物にも細心の注意を払いましょう。
受付係にふさわしい服装とは?
基本的には、参列者と同じく準喪服(ブラックスーツ・ブラックフォーマル)を着用します。
男性の場合
- 光沢のない黒のスーツ
- 白の無地ワイシャツ
- 黒の無地ネクタイ
- 黒の靴下、光沢のない黒の革靴
女性の場合
- 光沢のない黒のアンサンブル、ワンピース、スーツ
- 黒のストッキング
- 光沢のない黒のパンプス(ヒールは高すぎないもの)
- アクセサリーは結婚指輪と一連のパールのネックレス程度に。メイクは薄化粧を心がけます。
立ったり座ったりすることが多いので、動きやすく、シワになりにくい服装がおすすめです。
あると便利な持ち物リスト
準喪服の他に、持っておくと安心なアイテムです。
- 数珠:自分の宗派のもので構いません。
- 黒または白のハンカチ:涙を拭う際などに。
- 筆記用具:念のため自分でも持っておくと便利です。
- 予備のストッキング(女性):伝線してしまった時に備えて。
- 小さなメモ帳:頼まれごとなどを書き留めるのに役立ちます。
【体験談】葬式の受付でよくある質問と失敗しないための注意点
ここでは、私が実際に受付を経験した際や、周りから聞いた話を元に、よくある疑問や失敗しがちなポイントについてお答えします。
香典を辞退されている場合はどう伝える?
先述の通り、「故人の遺志ですので」と丁寧にお伝えするのが基本です。それでも「どうしても」と置いていこうとする方もいらっしゃいます。その場合は無理に押し返すのではなく、一度お預かりし、その旨を後で遺族に報告するのが良いでしょう。状況をメモに残しておくことが大切です。
顔見知りや親しい友人への対応は?
親しい間柄の人が来ると、つい普段の口調で話してしまいがちですが、そこはぐっとこらえましょう。あなたはあくまで「受付係」という公の立場です。他の方と同じように、丁寧な言葉遣いで対応するのがマナーです。個人的な話は、後日改めてする時間を作りましょう。
お札を数えてもいい?香典の管理方法
弔問客の前でお札を数えるのは絶対にNGです。香典の確認と集計は、必ず受付終了後に、複数の人で人目につかない場所で行います。お預かりした香典は、すぐにバッグや箱に入れ、肌身離さず管理するくらいの気持ちでいましょう。
遅れてきた弔問客への対応は?
葬儀が始まってから来られる方もいます。その場合も、慌てずに通常通り受付を行います。そして、「式はすでに始まっております。こちらへどうぞ」と静かに式場へ案内しましょう。葬儀社のスタッフに引き継ぐのが最もスムーズです。
まとめ
今回は、葬式の受付における挨拶の文例から、受付係の仕事内容、マナー、そして弔問客としての振る舞いまで、幅広く解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
葬儀の受付という役目は、確かに責任が重く、緊張するものです。しかし、一番大切なのは「故人を悼み、ご遺族に寄り添う心」です。この記事でご紹介した基本的な流れと挨拶を頭に入れておけば、きっと落ち着いて対応できるはずです。
この記事が、あなたの大役を果たす一助となれば幸いです。
【関連記事】
- 葬式の受付での挨拶は?失礼のない言葉遣いと流れを解説
- 葬式に花を贈る完全ガイド|マナー違反なく弔意を伝える方法
- 葬式は何日後に行う?日程の決め方から流れまでを徹底解説
- お葬式がダメな日が一目でわかるカレンダー【2025年版】
- 葬式屋の求人探し決定版!未経験から目指す仕事内容と給料
【参考資料】