ご両親の訃報に際し、深くお悔やみ申し上げます。大切な方を亡くされた悲しみの中で、葬儀の手続きや香典の準備は精神的にも大きな負担となりますよね。
特に、嫁がれた娘さんが親御さんの葬儀に参列する際、香典をどのように準備し、また香典袋にどのような名前を記載するべきか、多くの方が疑問を抱え、不安を感じていらっしゃいます。
この記事では、そのようなあなたの疑問や不安を解消するために、嫁いだ娘さんが親の葬儀で香典を包む際の正しい名前の書き方、金額の目安、喪主との関係性による違いなど、詳細かつ網羅的に解説します。
これを読めば、香典に関する不安が解消され、安心して葬儀に参列できるようになるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
嫁いだ娘が親の葬儀に包む香典、基本の考え方
嫁いだ娘が親の葬儀に香典を包む際、その考え方は未婚の娘とは異なる場合があります。一般的には、結婚して別の世帯を築いているため、独立した立場として香典を包むことになります。
香典の役割と、嫁いだ娘の立場
香典は、故人の冥福を祈り、遺族への弔意を示すために贈るものです。嫁いだ娘は実家から独立した世帯を持つため、原則として実家の親に対して香典を包むのが一般的です。
ただし、喪主が配偶者(夫)と共に務める場合や、親族間で事前に香典辞退の意向が伝えられている場合など、状況によっては香典が不要となるケースもあります。
「香典は不要」と言われた場合の対処法
親族から「香典は不要」と伝えられることもあります。これは、遺族の負担を軽減するため、あるいは香典返しなどの手間を省くための配慮である場合が多いです。
このような場合でも、故人への弔意を示す方法は他にもあります。
- 供花や供物を贈る
- お悔やみの手紙を添える
- お手伝いを買って出る
といった方法で気持ちを伝えることができます。無理に香典を渡すことは、かえって相手に気を遣わせてしまう可能性があるため、先方の意向を尊重しましょう。
嫁いだ娘が親の葬儀で香典に書く「名前」の正解とは?
最も知りたいのは、香典袋にどのような名前を書くかという点でしょう。ここが最も多くの人が迷うポイントです。

基本は「夫の姓」を記載する
嫁いだ娘が香典を出す場合、基本的には夫の姓(氏名)を記載するのが一般的です。
これは、夫婦は同一世帯という考え方に基づき、香典も世帯主である夫の名前で出すという慣習があるためです。具体的には、香典袋の表書きの下段中央に、夫のフルネームを記載します。
例:〇〇家(夫の姓)〇〇(夫の名前)
夫婦連名で香典を出す場合の書き方
夫婦で連名にする場合は、夫の氏名の左隣に妻の名前を記載します。
例:〇〇家 〇〇(夫の名前) 〇〇(妻の名前)
旧姓を併記するケースとその理由
一部の地域や家庭によっては、旧姓を併記する慣習がある場合もあります。
これは、故人との血縁関係を明確にする意味合いや、親族が「〇〇さんの娘さん」と認識しやすいようにという配慮からです。
どのような場合に旧姓を併記するのか
旧姓を併記する場合は、夫の氏名の横に小さく旧姓をカッコ書きで記載するか、夫の氏名の下に妻のフルネームを記載し、その横に旧姓を記載することが考えられます。
例1:〇〇家 〇〇(夫の名前) (旧姓:△△)
例2:〇〇家 〇〇(夫の名前)
〇〇(妻の名前) (旧姓:△△)
子供の名前を記載する際の注意点
嫁いだ娘が香典を出す際に、子供の名前を連名で記載することは、基本的にありません。
香典は世帯主が出すものであり、子供が独立した生計を立てていない限り、個別に香典を包むことは一般的ではないためです。
ただし、子供が成人しており、社会人として独立している場合は、それぞれが個別に香典を包むこともあります。その場合は、各自のフルネームを記載します。
香典袋の選び方と表書きのルール
香典袋の選び方や表書きのルールも、葬儀において重要なマナーの一つです。
宗派別の香典袋の選び方
香典袋は、故人の宗派によって適切な表書きが異なります。
- 仏式:「御霊前」「御香典」
- 神式:「御玉串料」「御榊料」
- キリスト教式:「お花料」「御霊前」(カトリックの場合)
もし故人の宗派がわからない場合は、「御霊前」と記載するのが無難です。ただし、浄土真宗では「御仏前」を使用するため、「御霊前」は適切ではありません。故人の宗派が明確にわかる場合は、それに合わせた表書きを選びましょう。
薄墨で書く理由と香典袋の書き方
香典袋の表書きは、薄墨(うすずみ)で書くのがマナーです。
これは、「悲しみの涙で墨が薄くなった」「急な訃報で墨を擦る時間がなかった」という気持ちを表すためとされています。市販の筆ペンには薄墨用のものもありますので、活用すると良いでしょう。
名前以外の記載事項と配置
香典袋の裏面には、氏名と住所、そして包んだ金額を記載します。
これは、香典返しを行う際に必要な情報となるため、忘れずに記入しましょう。金額は旧字体(壱、弐、参など)で書くのが正式とされています。
香典の金額相場と渡し方
香典の金額は、故人との関係性や地域によって異なりますが、一般的な相場があります。
親への香典の一般的な相場
嫁いだ娘が親の葬儀に包む香典の金額は、一般的に5万円から10万円が目安とされています。
これはあくまで目安であり、自身の経済状況や、兄弟姉妹とのバランスも考慮して決定することが重要です。親が喪主の場合、香典は不要なケースもあります。
偶数を避ける理由と新札を避ける理由
香典では、偶数の金額や新札を避けるのがマナーです。
- 偶数を避ける理由:「割り切れる」ことから「縁が切れる」ことを連想させるため、慶事と同様に避ける傾向があります。
- 新札を避ける理由:「不幸を予期していた」という印象を与えてしまうため、不幸が突然訪れたことを表すために、あえて古いお札を使用します。
どうしても新札しかない場合は、一度折り目をつけてから包むのが良いでしょう。
香典の渡し方とタイミング
香典は、通夜または告別式で受付に渡すのが一般的です。受付がない場合は、喪主や遺族に直接手渡します。
渡す際は、お悔やみの言葉を添えて、袱紗(ふくさ)から取り出して渡すのがマナーです。

香典返しと辞退の連絡
香典を贈った側、受け取った側双方にとって、香典返しは大切な要素です。
香典返しの基本と金額の目安
香典返しは、香典をいただいたことへのお礼と、無事に葬儀を終えた報告を兼ねて贈るものです。
香典返しの金額は、いただいた香典の金額の半額程度(半返し)が一般的とされています。
品物としては、日持ちのする食品や消耗品(お茶、お菓子、タオルなど)が選ばれることが多いです。
親族からの香典返しを辞退するケース
近しい親族の場合、香典返しを辞退する意向を伝えることもあります。
これは、遺族の負担を軽減するため、あるいは香典を「助け合い」の気持ちとして受け取ってほしいという配慮からです。辞退する場合は、香典を渡す際にその旨を伝えると良いでしょう。
喪主が嫁いだ娘の場合の香典について
もし嫁いだ娘が喪主を務める場合、香典をどうするのか疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
喪主は香典を出すのか?
喪主は、葬儀を執り行う立場であるため、原則として香典は不要です。
これは、喪主自身が香典を受け取る側になるため、自分自身に香典を出すことはないという考え方に基づきます。
夫婦で喪主を務める場合の考え方
嫁いだ娘とその夫が夫婦で喪主を務める場合も、同様に香典は不要です。
夫婦で協力して葬儀を執り行う立場となるため、世帯としての香典は必要ありません。
親の介護費用を負担していた場合の香典について
これまで親の介護費用を負担していた場合、香典をどうすべきか迷うこともあるかもしれません。
介護費用と香典の考え方の違い
介護費用と香典は、全く異なる性質のものです。
- 介護費用:親の生前の生活や医療にかかる費用
- 香典:故人への弔意と遺族への葬儀費用負担軽減のための見舞金
したがって、介護費用を負担していたからといって、香典を辞退する、あるいは金額を減らすといったことは、原則として関係ありません。
兄弟姉妹との相談の重要性
介護費用を負担していた場合でも、香典については兄弟姉妹と事前に相談することをおすすめします。
これは、親族間で不公平感が生じないようにするためです。介護費用として負担した金額を考慮して、香典の金額を調整するなどの話し合いが行われる場合もあります。
遠方で葬儀に参列できない場合の香典の送り方
遠方に住んでいるなど、葬儀に参列できない場合でも、香典を送って弔意を示すことができます。
現金書留での送り方と注意点
香典を郵送する場合は、必ず現金書留を利用します。
現金書留用の封筒に、香典袋に包んだ香典とお悔やみの手紙を同封します。手紙には、参列できなかったことへのお詫びと、故人への追悼の言葉を記しましょう。
お悔やみの手紙の書き方
お悔やみの手紙は、簡潔かつ丁寧に書くことが大切です。
- 時候の挨拶は不要
- 拝啓、敬具などの頭語・結語は不要
- 句読点は打たないのが一般的
- 重ね言葉(くれぐれも、ますますなど)や忌み言葉(度々、またなど)は避ける
手紙の文面は、自身の言葉で心を込めて書くことが最も重要です。
身内だけの葬儀における香典の考え方
近年増えている身内だけの葬儀(家族葬など)では、香典の考え方も異なります。
家族葬の香典辞退の意向
家族葬は、近親者のみで故人を見送る形式であり、香典や供花・供物を辞退するケースが非常に多いです。
これは、遺族の負担を軽減するためや、形式にとらわれず故人との最期の時間を大切にしたいという意向があるためです。
香典辞退でも弔意を伝える方法
香典辞退の場合でも、故人への弔意を伝えたいと考えるのは自然なことです。
そのような場合は、弔電を送る、後日改めて弔問に伺う、供花や供物を贈る(ただし、辞退されていなければ)といった方法で気持ちを表すことができます。
葬儀後の香典に関するマナー
香典を巡るマナーは、葬儀後も続きます。
葬儀後の御礼状と香典返しのタイミング
香典を受け取った側は、香典をいただいた方へ御礼状を送り、香典返しを準備します。
御礼状は、忌明け(四十九日法要後)を目安に送るのが一般的です。香典返しも、この時期に合わせて送ることが多いです。
親族間で香典に関するトラブルを避けるために
香典に関するトラブルを避けるためには、事前に親族間でしっかりと話し合い、合意形成をしておくことが重要です。
特に、香典の金額や香典返しの有無、名前の書き方など、個々の家庭や地域の慣習によって異なる部分があるため、疑問点があれば遠慮なく確認しましょう。

まとめ
多岐にわたる疑問や不安を解消するために、詳しく解説してきました。
嫁いだ娘が親の葬儀で香典を包む場合、基本的には夫の姓(氏名)を記載するのが一般的です。旧姓の併記については、地域の慣習や親族間の合意によって判断が分かれます。
また、香典の金額相場や渡し方、香典袋の選び方や表書きのルール、さらに喪主を務める場合や介護費用を負担していた場合の考え方、遠方からの送り方など、様々な角度から情報を提供しました。
最も重要なのは、故人への感謝の気持ちと、遺族への心からの配慮です。形式にとらわれすぎず、しかしマナーを尊重しながら、故人を偲ぶ気持ちを伝えることが大切です。
この記事が、あなたが安心して葬儀に参列し、故人との最期のお別れを滞りなく行える一助となれば幸いです。
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