葬式でご飯に箸を立てる意味とは?枕飯の作法や由来を解説

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葬式の知恵袋・イメージ

「お箸をご飯に立ててはいけません」。

子どもの頃、誰もが一度はそう教わったことがあるのではないでしょうか。

しかし、人生の最期のお別れの場であるお葬式では、その「してはいけないこと」が、故人のために行われます。

普段はマナー違反とされる行為が、なぜ葬儀の場では大切な儀式となるのか。

この記事では、その深い理由と、心を込めて故人をお送りするための作法について、一つひとつ丁寧に解説していきます。

大切な人を亡くされたあなたの不安が、少しでも和らぐ一助となれば幸いです。

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葬式でご飯に箸を立てる行為は「枕飯(一膳飯)」のこと

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まず初めに、このご飯に箸を立てる儀式の呼び名からご説明します。

これは「枕飯(まくらめし)」、または「一膳飯(いちぜんめし)」と呼ばれる、故人のためだけに用意される特別な食事です。

故人が安らかに旅立てるようにという願いを込めて、亡くなられてからすぐに枕元にお供えすることから、この名前で呼ばれています。

大谷
大谷

祖父が亡くなった時、慣れない手つきで枕飯を用意したのを覚えています。当時は意味も分からず、ただ教えられるがままでした。

枕飯(まくらめし)とは故人のために供える特別なご飯

枕飯は、故人がこの世を離れ、あの世へと旅立つ際に食べるお弁当のようなもの、と考えると分かりやすいかもしれません。

もうこの世のものを口にすることはない故人へ、家族が捧げる最後の食事であり、深い愛情表現の一つなのです。

「立て箸」がマナー違反とされる理由との関係性

では、なぜ普段の食事で「立て箸」が厳しく戒められるのでしょうか。

それは、まさにこの枕飯を連想させるからです。

ご飯に箸を立てる行為は「死」を直接的に想起させるため、日常の食卓では縁起が悪い、不作法な行為とされているのです。

つまり、葬儀の場で行う立て箸は、あえて日常とは違う「非日常」の行為をすることで、「これは故人のためだけの特別な食事ですよ」という印を示していると言えます。

なぜご飯に箸を立てるの?枕飯の由来と込められた4つの意味

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枕飯には、ただ故人にお腹を満たしてほしいというだけでなく、古くからの信仰に基づいた様々な願いが込められています。

その代表的な4つの意味を見ていきましょう。

意味①:故人があの世へ旅立つための道標として

高く立てられたお箸が、故人の魂が迷わずにあの世へ向かうための道標になる、という考え方です。

暗い夜道で灯台の光が船を導くように、お箸が故人の魂を浄土へと導いてくれる、という優しい願いが込められています。

意味②:この世とあの世の橋渡し役

二本のお箸を一本に見えるように揃えて立てることから、この世とあの世の「橋(箸)渡し」になる、という説もあります。

故人が無事に三途の川を渡り、向こう岸へたどり着けるようにという祈りが形になったものです。

意味③:故人が生前と同じように食事に困らないように

旅立ちの際に持たせるお弁当として、あの世でも食事に困ることがないようにという願いも込められています。

また、生前使っていたお茶碗にご飯を盛ることで、故人が自分のものだと分かりやすいように、という配慮も含まれています。

大谷
大谷

色々な意味を知ると、ただの作法ではなく、故人への深い愛情が詰まった儀式なのだと改めて感じさせられますね。

意味④:故人だけが食べるご飯であることの印

先ほども触れましたが、あえて普段はしない「立て箸」をすることで、「これは生きている人間が食べるものではなく、故人のためのものだ」ということを明確に区別する意味合いがあります。

【枕飯の作法】正しい作り方と準備するもの

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それでは、実際に枕飯を準備する際の具体的な作法について解説します。

厳密な決まりは地域や宗派によって異なりますが、ここでは一般的な方法をご紹介します。

【準備するもの】

  • お茶碗:故人が生前に愛用していたものを使います。もし無ければ、新しい白いお茶碗を用意しましょう。
  • お米:一合分のお米を炊きます。この時、他の家族の分とは別に炊くのがより丁寧とされています。
  • お箸:故人が使っていたものか、新しいお箸を用意します。

枕飯の作り方:山盛りのご飯と箸を用意する

  1. 炊きあがったご飯を、用意したお茶碗に山盛りによそいます。おにぎりのように軽く握ってから盛ると、高く盛りやすくなります。
  2. ご飯の中心に、お箸を2本揃えて垂直に、深く突き立てます。

たったこれだけですが、心を込めて行うことが何よりも大切です。

大谷
大谷

山盛りにするのが意外と難しいんです。お茶碗を一度水で濡らしておくと、ご飯粒がつきにくく形を整えやすいですよ。

誰が作る?いつからいつまで供えるのが基本?

枕飯は、故人に近しい家族が作るのが一般的です。

供えるタイミングは、故人が亡くなられてからすぐ、ご遺体を安置した枕元に「枕飾り」として他の供物と一緒に供えます。

そして、出棺までの間、毎日新しいものに炊き替えて供え続けるのが基本とされています。

ただし、現代の生活様式では毎日の炊き替えが難しい場合も多いため、一度だけお供えするケースも増えています。

枕飯を供える場所と向きに決まりはある?

枕飯は、ご遺体の枕元に置かれた小さな机(枕飾り壇)の上にお供えします。

他の枕飾り(お水、お線香、ろうそく、枕団子など)と一緒に並べますが、特に「この位置でなければならない」という厳格な決まりはありません。

大切なのは、故人のそばに寄り添うように供える気持ちです。

枕飯の箸は一本?それとも二本?宗派による違いについて

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枕飯の作法は、実は宗派によって考え方が大きく異なります。

特に知っておきたいのが、浄土真宗の考え方です。

宗派 枕飯・枕飾りの考え方 理由
浄土真宗 原則として不要 亡くなるとすぐに阿弥陀如来の力で仏様になると考えるため、旅の準備は必要ない。
多くの他の宗派 必要とされることが多い 故人が死後49日間の旅を経て仏様になると考えるため、その間の食事や道標として供える。

浄土真宗では基本的に枕飯は供えない

浄土真宗には「往生即成仏(おうじょうそくじょうぶつ)」という教えがあります。

これは、「亡くなったら時間をおかずに、すぐに阿弥陀如来のいる極楽浄土に往き、仏になる」という考え方です。

そのため、死後の世界を旅するという概念がなく、旅の準備である枕飯や枕団子も原則として必要ないとされています。

ただし、ご家族の気持ちとしてどうしてもお供えしたい場合は、お寺や葬儀社に相談してみるのが良いでしょう。

箸の立て方や本数は地域や宗派によって異なる場合も

箸を一本だけ立てる地域や、箸を交差させる地域など、細かな作法は様々です。

「これが唯一の正解」というものはありませんので、もし迷った場合は、地域の慣習に詳しい葬儀社の担当者や親族の年長者に確認することをおすすめします。

供え終わった枕飯の処分はどうすればいい?

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出棺を終え、故人が旅立った後、お供えしていた枕飯をどうすればよいのか、迷われる方も多いでしょう。

処分の方法にも、昔ながらの慣習と現代的な方法があります。

昔ながらの処分の方法(出棺時に棺に入れる・土に埋める)

古くからの習わしでは、故人があの世へ持っていくお弁当として、出棺の際に半紙などに包んで棺の中に入れるのが一般的でした。

また、庭のある家では、土に還すという意味で庭の土に埋めるという方法もありました。

大谷
大谷

私の祖母の時は棺に入れました。ただ、火葬場の規則で副葬品が制限されることもあるので、事前に葬儀社さんへの確認が安心です。

現在の一般的な処分方法(半紙に包んで可燃ゴミへ)

現代では、衛生面や環境への配慮から、半紙や白い紙に包み、塩で清めてから可燃ゴミとして処分するのが最も一般的な方法となっています。

他の生ゴミと混ぜず、感謝の気持ちを込めて「ありがとうございました」と手を合わせてから処分することで、気持ちの整理もつきやすくなります。

枕飯を家族で分けて食べるのは良い?

故人とのつながりをいただくという意味で、お供えしたご飯を家族で分ける「お下がり」という風習が一部地域には存在します。

故人の力をいただくことで、家族が健康でいられると考えられていたようです。

しかし、これはあくまで一部の風習であり、衛生的な観点からも、現代ではあまり行われません。

特に夏場は傷みやすいため、無理に食べることは避けた方が賢明でしょう。

まとめ

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最後に、この記事でお伝えした大切なポイントを振り返ります。

  • 葬式でご飯に箸を立てるのは「枕飯」といい、故人のための特別な食事である。
  • 立て箸には「道標」や「橋渡し」など、故人の旅の安全を願う深い意味が込められている。
  • 作り方は、故人の茶碗に山盛りのご飯を盛り、箸を垂直に立てるのが基本。
  • 浄土真宗など、宗派によっては枕飯を供えない場合もあるため確認が必要。
  • 供え終わった枕飯は、出棺時に棺に入れるか、紙に包んで可燃ゴミとして処分する。

枕飯は、単なる形式的な儀式ではありません。

それは、大切な人を失った悲しみの中で、家族が故人のためにできる最後の「おもてなし」であり、深い愛情と祈りが結晶化したものなのです。

作法やしきたりに戸惑うこともあるかと思いますが、何よりも大切なのは故人を偲び、安らかな旅立ちを願うあなたのその気持ちです。

この記事が、あなたの心に少しでも安らぎをもたらすことができたなら、これ以上の喜びはありません。

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【参考資料】

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【この記事を書いた人】
大谷

「葬式の知恵袋」運営者の大谷です。

私自身の経験から、葬儀に関する不安や疑問を抱える方々の力になりたいと願い、このサイトを立ち上げました。

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※記事の執筆には一部AIを利用しております。AIの回答には間違いが含まれている場合があり、必ずしも正しいとは限りません。重要な情報は確認するようにしてください。誤情報による記事の修正依頼はお問い合わせページよりお願いします。
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