葬儀に参列する際、受付での適切な受け答えは、故人への敬意を示す大切なマナーの一つです。しかし、「何を言えばいいの?」「どんな流れになるの?」と不安に感じる方も少なくないでしょう。特に、初めて葬儀に参列される方や、久しぶりに参列する方にとっては、いざという時に戸惑ってしまうこともあります。
この記事では、葬儀受付での受け答えに関するあらゆる情報を網羅的に解説します。受付での基本的な流れから、状況に応じた具体的な言葉遣い、香典の渡し方、記帳の仕方まで、初めての方でも安心して臨めるよう、わかりやすく丁寧に解説していきます。この記事を読み終える頃には、きっと自信を持って葬儀受付に立てるようになっているはずです。
葬儀受付の基本|役割と流れを理解する
葬儀に参列する際、まず最初に故人への弔意を示す場となるのが受付です。受付の役割と一般的な流れを事前に把握しておくことで、当日の不安を軽減し、スムーズに手続きを済ませることができます。
受付の役割と、なぜ重要なのか
葬儀の受付は、単なる記帳や香典の受け渡し場所ではありません。そこには、遺族の方々が故人との最後のお別れに集中できるよう、参列者への案内や手助けをするという重要な役割があります。
参列者の確認と把握
受付では、誰が参列したかを記録します。これは、後日、遺族が香典返しや挨拶状を送る際のリストとして使われるため、非常に重要です。正確な記帳は、遺族の手間を減らすことにも繋がります。
香典の受け取りと管理
故人への弔意の気持ちとしてお渡しする香典は、受付で管理されます。受付担当者は、香典の金額を確認し、間違いなく受け取ったことを記録します。これは、遺族が後で香典の管理をする上で不可欠な作業です。
会場案内やその他情報の提供
受付は、参列者への案内所でもあります。式場の場所、お手洗いの位置、控室の有無など、様々な質問に対応し、参列者が安心して葬儀に参列できるようサポートします。初めての会場で不安な参列者にとっては、受付の存在は非常に心強いものです。

受付から会場入りまでの一般的な流れ
葬儀受付から会場に入るまでの流れを事前に把握しておけば、当日焦ることなくスムーズに行動できます。
1. 受付へ進む
会場に到着したら、まず受付の場所を確認し、列に並びます。混雑している場合は、慌てずに順番を待ちましょう。
2. 挨拶と香典を渡す
自分の番が来たら、受付担当者に一礼し、弔意の言葉を述べながら香典を渡します。この際の言葉遣いについては、後ほど詳しく解説します。
3. 記帳を行う
受付担当者から記帳台を案内されますので、住所、氏名を丁寧に記入します。楷書で読みやすく書くことを心がけましょう。
4. 案内を受け、会場へ
記帳が終わると、受付担当者から式場の場所や控室について案内があります。案内に従って、静かに会場へ進みます。

【状況別】葬儀受付での受け答え|具体的な言葉遣いとマナー
葬儀受付での受け答えは、故人への敬意と遺族への配慮を示す重要なマナーです。状況に応じた適切な言葉遣いを身につけることで、より丁寧な弔意を伝えることができます。
最も基本的な受け答えの言葉
どのような状況でも使える、基本的な言葉遣いを覚えておきましょう。
香典を渡す際の言葉
香典を渡す際は、受付担当者に一礼し、両手で丁寧に差し出します。このとき、以下の言葉を添えるのが一般的です。
- 「この度はご愁傷様でございます。心ばかりですが、お供えください。」
- 「この度は誠にご愁傷様でございます。安らかなるご冥福をお祈りいたします。」
これらの言葉は、故人の死を悼み、遺族への配慮を示すものです。
記帳時の言葉
記帳をする際、特に言葉を交わす必要はありませんが、もし受付担当者と目が合えば軽く会釈をする程度で十分です。記帳を終えて筆記用具を返す際に、「ありがとうございました」と一言添えるのも丁寧です。

香典を辞退された場合の対応
近年、「香典辞退」とされている葬儀も増えています。その場合の対応も確認しておきましょう。
無理に渡そうとしない
事前に香典辞退の案内があった場合や、受付にその旨が掲示されている場合は、無理に香典を渡そうとしないのがマナーです。遺族の意向を尊重することが大切です。
弔意の言葉を丁寧に伝える
香典を辞退されても、弔意を伝えることはできます。
- 「この度はご愁傷様でございます。心よりお悔やみ申し上げます。」
- 「ご厚意に感謝申し上げます。安らかなるご冥福をお祈りいたします。」
など、簡潔に弔意を伝えましょう。
遅れて到着した場合の対応
やむを得ず遅れて到着してしまった場合でも、失礼のないように対応しましょう。
簡潔に詫びる言葉
受付担当者に一言、遅れたことへのお詫びを伝えます。
- 「遅くなりまして申し訳ございません。この度はご愁傷様でございます。」
- 「大変申し訳ございません。どうぞよろしくお願いいたします。」
長く言い訳をするのは避け、簡潔に済ませましょう。
静かに手続きを済ませる
他の参列者の迷惑にならないよう、できるだけ静かに、速やかに記帳や香典の受け渡しを済ませましょう。

受付に知り合いがいた場合の対応
受付に故人との共通の知人や、遺族の方などがいる場合も考えられます。
丁寧な会釈と簡潔な挨拶
親しい間柄であっても、葬儀の場であることを忘れずに、丁寧な会釈と簡潔な挨拶に留めましょう。
- 「〇〇さん、大変でしたね。」
- 「この度は、心よりお悔やみ申し上げます。」
込み入った話は避けるのがマナーです。
私語は厳禁
受付は多くの人が行き交う場所です。私語は慎み、他の参列者の迷惑にならないよう注意しましょう。
香典の準備と渡し方|受付で困らないために
葬儀において、香典は故人への弔意を示す大切なものです。受付でスムーズに香典を渡せるよう、事前に準備とマナーを確認しておきましょう。
香典袋の選び方と表書きの書き方
香典袋の種類や表書きの書き方は、宗教・宗派によって異なります。
宗教・宗派別の香典袋
一般的に、仏式では蓮の絵柄が描かれたものや、白無地の不祝儀袋を選びます。神式では白無地の不祝儀袋に「玉串料」「御榊料」などと書き、キリスト教式では「お花料」と書きます。迷った場合は、白無地の不祝儀袋を選んでおけば失礼にあたりません。
表書きの書き方と注意点
表書きは、薄墨の筆ペンで書くのがマナーです。これは「涙で墨が薄くなった」という悲しみを表現しています。
- 仏式:「御霊前」「御香典」
- 神式:「玉串料」「御榊料」「御神前」
- キリスト教式:「お花料」「御ミサ料(カトリック)」
水引は、結び切り(二度と繰り返さないという意味)のものを選びます。

香典の金額相場と新札・旧札のマナー
香典の金額は、故人との関係性や地域によって相場が異なります。
関係性別の香典相場
一般的な香典の金額相場は以下の通りです。
関係性 | 金額相場 |
---|---|
親 | 5万円~10万円 |
兄弟・姉妹 | 3万円~5万円 |
祖父母 | 1万円~3万円 |
友人・知人 | 5千円~1万円 |
会社関係者 | 3千円~5千円 |
これはあくまで目安であり、地域の習慣やご自身の経済状況に合わせて判断しましょう。
新札・旧札の使い分け
香典には、新札ではなく、あえて少し使用感のある旧札を入れるのがマナーとされています。「不幸を予期して準備していた」という印象を与えないためです。ただし、あまりにもボロボロのお札は避け、清潔な旧札を選びましょう。もし新札しかない場合は、一度折り目を付けてから香典袋に入れるのが良いとされています。
袱紗(ふくさ)の正しい使い方
香典は、袱紗(ふくさ)に包んで持参するのが正式なマナーです。
袱紗の役割と種類
袱紗は、香典袋を汚したり、折り曲げたりするのを防ぎ、相手への敬意を示すためのものです。慶事用と弔事用があり、弔事用は紺、緑、灰色、紫など寒色系のものを選びます。紫色は慶弔どちらにも使えるため、一つ持っておくと便利です。
袱紗から香典を出す作法
受付で香典を渡す際は、まず袱紗から香典袋を取り出し、袱紗を座布団のようにして香典袋をその上に乗せて両手で渡します。このとき、相手に表書きが読める向きに渡すのがマナーです。

記帳の仕方と代理記帳のマナー
葬儀受付では、香典を渡すだけでなく、記帳も重要な役割です。記帳の正しい方法や、代理で記帳する際のマナーを理解しておきましょう。
記帳の基本と正しい書き方
記帳は、遺族が後日、参列者を確認するために大切なものです。丁寧に、正確に記入しましょう。
記帳台での記入事項
一般的に、記帳台には以下の項目が用意されています。
- 住所:都道府県から番地まで正確に記入します。集合住宅の場合は、部屋番号まで忘れずに。
- 氏名:楷書で丁寧にフルネームを記入します。
- 連絡先:電話番号やメールアドレスを記入する場合もあります。
- 故人との関係:「友人」「会社関係」「親族」など、故人との関係性を記入します。
筆記用具は備え付けのものを使用します。薄墨の筆ペンが用意されていることが多いです。
連名での記帳について
夫婦で参列する場合や、会社の代表として参列する場合など、連名で記帳することがあります。
- 夫婦の場合:夫の氏名の隣に妻の名前のみ(名字は省略)を記入するのが一般的です。例:山田太郎 妻 花子
- 会社の場合:会社名、部署名、役職、氏名の順に記入します。例:株式会社〇〇 営業部 部長 山田太郎
人数が多い場合は、代表者が記帳し、「外〇名」と添書きすることもあります。

代理で記帳する際の注意点
病気や遠方などの理由で参列できない方がいる場合、代理で記帳を頼まれることがあります。
本来の参列者の氏名を記す
代理で記帳する場合、記帳欄には「本来参列する予定だった方の氏名」を記入します。そして、その氏名の左下に小さく「(代)」または「代理 山田花子」のように、代理人の氏名を記入します。
受付での説明
受付担当者には、代理で参列している旨を簡潔に伝えます。
- 「〇〇(本来の参列者名)の代理で参りました。」
- 「〇〇(本来の参列者名)より香典を預かって参りました。」
などと伝えましょう。香典も、本来の参列者の名義で準備されたものを持参します。

服装・持ち物・その他マナー|受付以外の注意点
葬儀は厳粛な場であり、受付でのマナーだけでなく、服装や持ち物、その他細かな行動にも配慮が必要です。
葬儀にふさわしい服装
男女ともに、略喪服を着用するのが一般的です。
男性の服装
黒のスーツに白いワイシャツ、黒のネクタイ、黒の靴下、黒の革靴が基本です。ネクタイピンやカフスボタンなどの装飾品は控えめにし、派手なものは避けましょう。
女性の服装
黒のアンサンブル、ワンピース、スーツなどが一般的です。インナーも黒で統一し、肌の露出は控えめにします。ストッキングは黒を着用し、靴も黒のパンプスを選びます。アクセサリーは、パールのネックレスやイヤリングなど、控えめなものに留めましょう。
子ども・学生の服装
子どもや学生は、学校の制服があれば制服を着用します。制服がない場合は、地味な色の服装(黒、紺、グレーなど)を選びます。キャラクターものや派手な色合いの服は避けるようにしましょう。

持ち物で準備しておくべきもの
受付をスムーズに済ませるためにも、必要なものを事前に準備しておきましょう。
香典・袱紗
香典と袱紗は、受付で最も重要な持ち物です。忘れないように、出発前に必ず確認しましょう。
数珠
仏式葬儀に参列する場合、数珠は必須です。宗派によって形が異なりますが、ご自身の宗派のものであれば問題ありません。貸し借りするのはマナー違反なので、必ず自分のものを持参しましょう。
ハンカチ、ティッシュ
涙を拭いたり、急な事態に備えたりするために、清潔なハンカチやティッシュは常に携帯しておきましょう。
スマートフォン(マナーモードに設定)
連絡手段として携帯しておきたいものですが、必ず電源を切るか、マナーモードに設定し、音が出ないように注意しましょう。会場内で操作することは控えましょう。

葬儀におけるその他のマナー
受付以外にも、葬儀全体で意識すべきマナーがあります。
お悔やみの言葉
遺族に直接言葉をかける機会があれば、「この度は誠にご愁傷様でございます」と簡潔に伝えます。長々と話したり、故人の死因を尋ねたりすることは控えましょう。
携帯電話のマナー
会場内では、携帯電話の電源を切るか、マナーモードに設定し、通話やメール、スマートフォンの操作は厳禁です。
私語や大きな声での会話
会場内では静かにし、私語や大きな声での会話は慎みましょう。故人や遺族への配慮を忘れないようにします。
写真撮影
葬儀会場での写真撮影は、基本的にマナー違反です。特別な許可がない限り、撮影は控えましょう。
焼香のマナー
焼香は、宗派によって回数や作法が異なりますが、一般的には、焼香台の前で一礼し、香を軽くつまんで額の高さまで持ち上げ、香炉にくべる、という流れです。詳しい作法がわからない場合は、他の参列者にならって行っても問題ありません。

よくある疑問Q&A|葬儀受付に関するお悩み解決
葬儀受付に関する疑問や不安は、人それぞれ異なります。ここでは、よくある質問にお答えし、皆様の疑問を解消します。
受付に人がいない場合はどうすればいい?
ごく稀に、受付に誰もいないという状況に遭遇することもあります。
案内を探すか、周りの人に尋ねる
まずは、会場内に案内表示がないか確認します。もし見当たらない場合は、近くの葬儀関係者(斎場スタッフなど)や、他の参列者に尋ねてみましょう。
「ご自由にお入れください」とある場合
「香典はご自由にお入れください」などと書かれた箱が設置されている場合は、その指示に従い、香典を入れ、記帳台で記帳を行います。

代理で香典を預かった場合の対応は?
親族や知人から香典を預かって代理で持参する場合もあります。
受付でその旨を伝える
受付で、香典を預かってきた旨を簡潔に伝えます。
- 「〇〇(本来の参列者名)様より、香典を預かって参りました。」
香典袋の表書きは、本来の参列者の氏名になっていることを確認しましょう。
記帳は代理人の名前を添える
記帳は「本来の参列者の氏名」を書き、その左下に小さく「(代)」または「代理 山田花子」のように代理人の氏名を記入します。
受付で名前を間違えられたらどうする?
万が一、記帳の際に名前を間違えられてしまったり、読み間違えられたりした場合でも、冷静に対応しましょう。
訂正をお願いする
記帳済みの名簿であれば、その場で訂正をお願いしましょう。
- 「恐れ入ります、私の名前は〇〇です。」
- 「漢字が少し違っておりまして、訂正をお願いできますでしょうか。」
と、丁寧に伝えれば問題ありません。
受付担当者の指示に従う
訂正の仕方は、受付担当者の指示に従いましょう。自分で修正テープなどを使うのは避け、必ず係の人にお任せします。
香典を持参しなかった場合は?
急な訃報で香典の準備が間に合わなかった、あるいは香典辞退の案内を見落としていた、などの理由で香典を持参しなかった場合もあります。
受付で事情を説明する
もし香典を持参しなかった場合は、受付で正直にその旨を伝えます。
- 「急なことで香典の準備が間に合いませんでした。誠に申し訳ございません。」
と、丁寧に伝え、後日改めて弔問に伺うか、郵送で送るなどの意向を伝えることもできます。ただし、あくまで遺族の負担にならないよう配慮することが大切です。
後日郵送も検討
後日、改めて現金書留で香典を郵送することも可能です。その際は、お悔やみの手紙を添えるのが丁寧です。
連名で香典を出す場合の記帳は?
複数人で香典を出す場合、記帳はどのようにすれば良いか迷うことがあります。
代表者が記帳し、連名の場合は「外一同」
会社の部署やグループなど、複数人で香典を出す場合は、代表者が記帳します。記帳欄には代表者の氏名を書き、その隣に「外一同」と書き添えるのが一般的です。
内訳は別紙に記入
香典袋の中には、香典を出した人全員の名前と金額を記載した別紙を同封します。これは、遺族が香典返しをする際の参考になります。

まとめ
この記事では、受付での基本的な流れから、状況に応じた具体的な言葉遣い、香典の準備や渡し方、記帳の仕方、そして服装やその他のマナーに至るまで、多岐にわたる情報を詳しく解説してきました。
葬儀という厳粛な場において、受付での適切な対応は、故人への最後の敬意と、深い悲しみの中にある遺族への心からの配慮を示すものです。初めての経験や、久しぶりの参列で不安を感じることは当然ですが、この記事を通じて、具体的なマナーや作法を理解することで、少しでもその不安が解消されたならば幸いです。
最も大切なのは、故人を偲び、遺族に寄り添う気持ちです。形式にとらわれすぎず、心を込めて対応することで、あなたの弔意はきっと伝わるでしょう。この情報が、あなたが自信を持って葬儀に参列するための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
今後、万が一の事態に直面した際にも、この記事があなたの支えとなり、落ち着いて行動するためのガイドとなることを願っています。
【関連記事】
- お葬式で女性がぺたんこ靴を選ぶ際の全て!失敗しない選び方とマナー
- お葬式でロングヘアをおろしたままはNG?失礼にならない髪型は?
- 葬式に女性は手ぶらで参列してもOK?持ち物と服装の不安を解消
- 葬式でのローファー、女性はOK?選び方とマナーを徹底解説
- 葬式のハンカチは100均でOK?マナーと選び方を徹底解説
【参考資料】