突然の訃報に接し、深い悲しみの中にいらっしゃることと存じます。
特に、故人が生前に入院されており「以前、お見舞いを渡したけれど、この場合、香典はどうすれば良いのだろう…?」と、のし袋の準備を前に手が止まってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
お見舞いと香典、どちらも故人を思う大切な気持ちの表れですが、マナーが絡むとどうして良いか分からなくなりますよね。
ご安心ください。この記事では、「葬式」と「お見舞い」が重なった際の、のし袋の選び方から金額の相場、そしてご遺族への伝え方まで、あなたの不安や疑問を一つひとつ丁寧に解消していきます。この記事を読み終える頃には、自信を持って故人をお見送りできるようになっているはずです。
【結論】お見舞いと香典は別物!基本的には両方用意する
まず、一番の疑問にお答えします。生前にお見舞いを渡していたとしても、香典は別途用意するのが基本的なマナーです。
なぜなら、この二つは込められた意味や目的が全く異なるからです。

目的が違う、と考えると分かりやすいですよね。混同せずに、それぞれ別のものとして準備しましょう。
お見舞いと香典の目的の違い
それぞれの目的を整理してみましょう。
- お見舞い:病気や怪我で療養している方へ、回復を願う気持ちや励ましの意味を込めて贈るもの。
- 香典:故人の霊前に供える金品。故人への哀悼の意を表し、急な出費があるご遺族への助け合いの意味も含まれます。
このように、お見舞いは「生前の回復を願うもの」、香典は「亡くなった後のお悔やみの気持ち」であり、全くの別物です。そのため、お見舞いを渡したからといって、香典が不要になるわけではありません。
ご遺族から香典辞退の申し出があった場合は?
近年、ご遺族の意向で香典を辞退されるケースが増えています。
受付で「故人の遺志により、御香典はご辞退申し上げます」と伝えられた場合は、無理にお渡しするのは避けましょう。ご遺族の気持ちを尊重することが何よりも大切です。
その際は、「さようでございますか。それではお言葉に甘えさせていただきます。この度はお悔やみ申し上げます」と丁寧にお悔やみの言葉を伝え、一礼してその場を離れるのがスマートな対応です。
どうしても弔意を示したい場合は、後日、お供え物やお手紙を送るといった方法もあります。
【状況別】お見舞いと香典の気になるマナーQ&A
ここからは、多くの方が悩む具体的なケースについて、Q&A形式で詳しく解説していきます。
生前にお見舞いを渡した場合、香典の金額は?
「お見舞いを渡した分、香典の金額を少し減らしても良いのだろうか?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし、これは少し注意が必要です。
相場通りの金額を包むのが基本
前述の通り、お見舞いと香典は別物です。そのため、お見舞いを渡したかどうかに関わらず、香典はご自身の年齢や故人との関係性に応じた相場の金額を包むのが丁寧な対応です。
自己判断で金額を減らしてしまうと、かえって失礼にあたる可能性もあります。
一般的な香典の金額相場は以下の通りです。あくまで目安として参考にしてください。
故人との関係性 | あなたの年齢 | 香典の金額相場 |
---|---|---|
親・義理の親 | 20代・30代 | 30,000円~100,000円 |
40代以降 | 50,000円~100,000円 | |
兄弟・姉妹 | 20代・30代 | 30,000円~50,000円 |
40代以降 | 50,000円~ | |
祖父母 | 全年代 | 10,000円~30,000円 |
職場の上司・同僚 | 全年代 | 5,000円~10,000円 |
友人・知人 | 全年代 | 5,000円~10,000円 |
※「4」や「9」など、死や苦を連想させる忌み数は避けるのが一般的です。

関係性が深いほど高額になりますが、大切なのは金額よりも弔う気持ちです。無理のない範囲で包みましょう。
経済的に難しい場合の考え方
とはいえ、様々な事情で相場通りの金額を用意するのが難しい場合もあるでしょう。その場合は、無理をする必要はありません。
大切なのは金額の多寡ではなく、故人を悼み、ご遺族をいたわる気持ちです。心を込めて包み、お悔やみの言葉をしっかり伝えることが何よりの供養になります。
お見舞いに行けなかった場合、香典に上乗せするべき?
逆のパターンとして、入院は知っていたもののお見舞いには行けず、訃報に接してしまったケースです。「お見舞いの分も香典に含めるべき?」と悩むかもしれませんね。
基本的には不要
この場合も、香典にお見舞いの分を上乗せする必要は基本的にありません。あくまで香典は香典として、相場に合った金額を包めばマナー違反にはなりません。
どうしても気持ちを伝えたい場合
もし、どうしても「お見舞いに行けなかった心苦しさ」を伝えたいのであれば、香典の金額を少しだけ多めに包むという考え方もあります。しかし、ご遺族に気を遣わせてしまう可能性もあるため、慎重に判断しましょう。
「御香典」とは別に「御見舞」の袋を用意するのは、ご遺族を混乱させてしまう可能性があるため、葬儀の場では避けるのが賢明です。
香典ののし袋の書き方は通常通りで良い?
お見舞いの経緯があったとしても、香典袋の書き方は特別なものではなく、通常の葬儀マナーに則って書けば問題ありません。
表書きは「御霊前」か「御香典」
のし袋の表書きは、故人の宗教・宗派によって異なります。
- 仏式(多くの宗派):御霊前(四十九日より前)、御仏前(四十九日以降)
- 神道:御玉串料(おたまぐしりょう)、御榊料(おさかきりょう)
- キリスト教:御花料(おはなりょう)
もし宗派が分からない場合は、「御霊前」としておけば多くの宗教で使えるため無難です。ただし、浄土真宗など一部宗派では「御霊前」を使わないため、分かっている場合は合わせるのが最も丁寧です。
「お見舞い」と併記する必要はない
香典袋に「御香典」と「御見舞」のように併記することは絶対にやめましょう。これはマナー違反となります。香典はあくまでお悔やみの気持ちを示すもの。一つの袋に異なる目的を混在させてはいけません。
意外と知らない?お見舞いと香典の「のし袋」の違い
ここで一度、お見舞い袋と香典袋の基本的な違いについておさらいしておきましょう。いざという時に間違えないよう、ポイントを押さえておくと安心です。
水引の色と結び方に注目!
のし袋を見分ける一番のポイントは「水引」です。
お見舞い袋 | 香典袋(弔事用) | |
---|---|---|
水引の色 | 紅白、赤金など | 黒白、双銀、黄白(関西など) |
水引の結び方 | 結び切り | 結び切り |
「のし」の有無 | あり | なし |
表書きの例 | 御見舞、祈御全快 | 御霊前、御香典、御仏前 |
お見舞いも弔事も「一度きりであってほしい」との願いを込めて、水引は「結び切り」を用います。しかし、色が全く異なるので注意が必要です。
間違えると大変!のし袋の選び方と注意点
特に注意したいのが、「のし」の有無です。「のし」とは、祝儀袋の右上についている飾りのことで、元々は長寿や繁栄を意味する「のしあわび」を簡略化したもの。これは慶事(お祝い事)に用いるものです。
したがって、お悔やみ事である香典袋には「のし」は絶対に使いません。コンビニや文具店で購入する際は、必ず「弔事用」や「御香典」と明記されているものを選びましょう。

急いでいると間違えやすいポイントです。お祝い用の「御祝」の袋と間違えないよう、しっかり確認してくださいね!
【体験談】私が実際に悩んだ「お見舞い」と「香典」の場面
実は私も、以前勤めていた会社の上司のお父様が亡くなられた際に、同じことで悩んだ経験があります。
そのお父様は長く入院されており、何度か上司と一緒にお見舞いにも伺っていました。そのため、いざ香典を用意する段になって、「お見舞いもしたし、金額はどうしよう…」「何か一言添えるべきだろうか…」と、とても迷ったのです。
色々と考えた末、私はマナーの基本に立ち返り、相場通りの金額を「御霊前」として包みました。そして、お通夜の受付で上司にお悔やみを述べた際に、「生前はお見舞いにお伺いさせていただき、ありがとうございました。穏やかなお顔でいらしたのが心に残っております」と、そっと一言だけ添えました。
すると上司は、「わざわざありがとう。父も喜んでいると思う」と少し表情を和らげてくださったのです。この経験から、形式的なマナーももちろん大切ですが、それ以上に相手を思いやる気持ちを自分の言葉で伝えることの重要性を実感しました。
香典以外で弔意を示す方法
香典を辞退された場合や、お葬式に参列できないけれど弔意を伝えたい場合など、香典以外にも気持ちを伝える方法はあります。
無理に香典を渡す以外の選択肢
- 弔電(ちょうでん)を打つ:お通夜や告別式に合わせて、お悔やみの電報を送ります。
- 供花(きょうか)・お供え物を送る:ご遺族の意向を確認した上で、お花やお線香、故人が好きだったお菓子などを送ります。
- 後日、自宅へ弔問(ちょうもん)に伺う:葬儀直後はご遺族も忙しいため、四十九日が過ぎた頃など、少し落ち着いた時期に連絡を取ってから伺うのがマナーです。
心のこもったお悔やみの手紙を添える
特に、お悔やみの手紙は気持ちが伝わりやすい方法です。故人との思い出や感謝の気持ち、ご遺族を気遣う言葉などを綴ることで、お金や物では表せない深い弔意を示すことができます。
まとめ
今回は、「お葬式」と「お見舞い」が重なった際ののし袋のマナーについて詳しく解説しましたが、いかがでしたでしょうか。最後に、今回の重要なポイントをまとめておきます。
- ✅ お見舞いと香典は目的が違う別物。基本的には両方用意するのがマナー。
- ✅ 香典の金額は、お見舞いの有無にかかわらず相場通りに包むのが丁寧。
- ✅ 香典袋の書き方は通常通り。表書きは「御霊前」などが一般的で、「お見舞い」とは書かない。
- ✅ ご遺族から香典辞退の申し出があれば、その意向を尊重し、無理に渡さない。
- ✅ 最も大切なのは、マナーの知識以上に、故人を悼み、ご遺族を思いやる温かい心です。
突然のことで戸惑うことも多いかと存じますが、この記事があなたの不安を少しでも和らげ、心を込めて故人をお見送りするための一助となれば幸いです。
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