突然の訃報に接し、「せめてお花で弔いの気持ちを伝えたい」と考える方は多いのではないでしょうか。しかし、いざ葬式に花を贈るとなると、マナーや手配方法、費用相場など、分からないことばかりで戸惑ってしまいますよね。
「失礼にあたらないだろうか」「どの花を選べばいいのだろう」そんな不安を抱えるあなたのための記事です。
この記事では、葬儀に贈る花の基本から、宗教・宗派ごとの注意点、スマートな手配方法まで、誰でも迷わず、故人を偲ぶ気持ちを込めたお花を贈れるように、一つひとつ丁寧に解説していきます。最後まで読めば、あなたの深い弔意が、きっとご遺族の心にも届くはずです。
葬式に贈る花の基本|まず知っておきたい3つの種類
「葬式の花」と一括りにされがちですが、実は贈るタイミングや目的によっていくつかの種類に分けられます。まずは、代表的な3つの花の違いを理解しておきましょう。この違いを知るだけで、いざという時に落ち着いて対応できますよ。

斎場や祭壇を飾る「供花(きょうか・くげ)」
供花は、故人への弔意を示し、祭壇や斎場を飾るための花です。「きょうか」または「くげ」と読みます。一般的に「葬式に花を贈る」と言う場合、この供花を指すことがほとんどです。
スタンド花とアレンジメントフラワーの違い
供花には、大きく分けて2つのスタイルがあります。
- スタンド花:専用のスタンドに花が活けられた形式。斎場の入口や祭壇脇に並べられ、誰から贈られた花か分かるように名札が立てられます。
- フラワーアレンジメント:カゴや器に花が活けられた形式。祭壇の上や故人の周りに飾られます。スタンド花よりもコンパクトなため、自宅での葬儀や小規模な式で選ばれることも多いです。
誰が贈ることが多い?
供花は、故人と生前に親しかった個人や会社関係者が贈ります。親族一同、子供一同、孫一同といった形で連名で贈ることも一般的です。香典の代わりとして贈られるケースもあります。
故人の枕元に供える「枕花(まくらばな)」
枕花は、訃報を受けてすぐに、故人が安置されている自宅や斎場の枕元に供える花です。通夜が始まる前、なるべく早く届けるのがマナーとされています。サイズは小ぶりなアレンジメントフラワーが一般的です。
贈るタイミングと注意点
枕花は、特に親しい間柄の親族や友人が贈ることが多いです。ご遺族の許可を得てから手配するのが最も丁寧な方法です。突然贈ると、ご遺族が対応に困ってしまう可能性もあるため、事前の確認を忘れないようにしましょう。
お別れの際に棺に入れる「献花(けんか)」との違い
献花は、参列者が一人ひとり、祭壇や棺に花を捧げて故人とお別れをするためのものです。こちらは葬儀社や喪主が用意するため、参列者が自分で持参したり贈ったりする花ではありません。キリスト教式のお葬式や、お別れ会などでよく見られます。供花と混同しないように注意しましょう。
葬儀の花の相場はいくら?関係性で見る費用目安
お花を贈る際に気になるのが、やはり費用のことですよね。安すぎても失礼にならないか、高すぎてもご遺族に気を遣わせてしまわないか、悩むポイントだと思います。ここでは、故人との関係性に応じた一般的な相場をご紹介します。
個人で贈る場合の費用相場
個人で供花を贈る場合、相場は5,000円〜20,000円程度が目安です。故人との関係性が深いほど、高額になる傾向があります。
関係性 | 費用相場 |
---|---|
親・兄弟姉妹 | 15,000円 ~ 30,000円 |
祖父母・おじ・おば | 10,000円 ~ 20,000円 |
友人・知人・同僚 | 5,000円 ~ 15,000円 |
※あくまで目安です。大切なのは金額よりも弔う気持ちです。
会社・法人として贈る場合の費用相場
会社名義で贈る場合は、個人よりも少し高めの15,000円〜30,000円程度が一般的です。特に重要な取引先などの場合は、一対(2基)で贈ることもあります。
連名や「社員一同」の場合
部署のメンバーなど複数人の連名で贈る場合は、一人あたり3,000円〜5,000円程度を出し合って、合計で15,000円前後の供花にするケースが多いようです。

【いつまでに?】葬儀に花を贈るタイミングと流れ
お花を贈る決心をしたら、次に行動に移します。しかし、慌てて手配するのは禁物です。正しいタイミングと手順を踏むことで、失礼なくスムーズに弔意を伝えられます。
訃報を受けたらまず確認すること
訃報に触れたら、感情的になってしまうかもしれませんが、まず冷静に以下の点を確認しましょう。
供花辞退の意向がないか
最も重要な確認事項です。最近は家族葬の増加などにより、ご遺族の意向で「供花・香典儀礼はご辞退申し上げます」と案内されるケースが増えています。この場合は、無理に贈るとかえってご遺族の負担になりますので、その意向を尊重しましょう。
葬儀の日時と場所
お花を届けるためには、通夜・告別式の日時と、斎場の名称・住所・電話番号が正確に必要です。
宗教・宗派
後述しますが、宗教によって適した花の種類が異なります。可能であれば確認しておくと、より心のこもったお花選びができます。
手配の最適なタイミングはいつ?
供花を手配するタイミングは、通夜に間に合わせるか、告別式に間に合わせるかで異なります。
通夜に間に合わせる場合
通夜が始まる数時間前までに届くように手配するのが理想です。斎場では通夜の前に祭壇の準備をしますので、その時間に合わせて届けることで、綺麗に飾り付けてもらえます。
告別式のみに間に合わせる場合
告別式に間に合わせたい場合は、告別式の前日までに手配を完了させておきましょう。当日の朝では間に合わない可能性が高いです。
葬儀後に贈りたい場合はどうする?
葬儀が終わってから訃報を知ることもありますよね。その場合でも、お花を贈ることは可能です。一般的には、四十九日法要までにご自宅へ贈ります。この時期、ご自宅には「後飾り祭壇(あとかざりさいだん)」が設けられていることが多いです。
自宅へ贈る際は、斎場へ贈るような大きなスタンド花ではなく、飾りやすいコンパクトなアレンジメントフラワーを選びましょう。色は白を基調に、淡い色を加えたものが好まれます。
どこで頼むのが正解?供花の手配方法を徹底比較
供花を手配する方法は、主に「葬儀社に依頼する」か「自分で花屋やネットで探す」かの2つです。それぞれにメリット・デメリットがありますので、ご自身の状況に合わせて選びましょう。
葬儀社に直接依頼するメリット・デメリット
- メリット:
- 葬儀の形式や斎場のルールを熟知しているため、間違いがない。
- 他の供花との統一感がとれ、祭壇全体が美しく仕上がる。
- 電話一本で済むことが多く、手間がかからない。
- デメリット:
- 花の種類やデザインの選択肢が少ない場合がある。
- 外部からの持ち込みを禁止している斎場の場合、この方法しか選べない。
自分で花屋やネットで手配するメリット・デメリット
- メリット:
- 豊富な種類やデザインの中から、故人のイメージに合った花を選べる。
- 価格を比較して、予算に合ったものを選びやすい。
- デメリット:
- 斎場のルール(持ち込みの可否、サイズ指定など)を自分で確認する必要がある。
- 名札の書き方や配送時間など、全て自分で指示しなければならない。

【初心者におすすめ】失敗しない手配の選び方
もしあなたが初めてお花を贈るのであれば、まずは葬儀を担当している葬儀社に連絡を取るのが最も確実です。訃報の案内に記載されている葬儀社に電話をし、「供花を贈りたいのですが」と伝えれば、スムーズに案内してもらえます。
時間に余裕があり、故人の好きだった花を贈りたいなどの希望がある場合は、ネットの花屋を探すのも良いでしょう。その際は必ず、注文前に斎場へ「外部の店から供花を届けたい」旨を連絡し、ルールを確認してください。
これで迷わない!名札(芳名札)の正しい書き方マナー
供花には、誰から贈られたものかを示すために「名札(ふだ)」または「芳名札(ほうめいふだ)」を付けます。この書き方にもマナーがありますので、しっかりと確認しておきましょう。
個人で贈る場合の名前の書き方
個人で贈る場合は、氏名をフルネームで記載します。シンプルに名前だけを記載するのが一般的です。
夫婦や家族連名で贈る場合
- 夫婦の場合:夫の氏名をフルネームで記載し、その左側に妻の名前のみを記載します。(例:〇〇 〇〇、左に 〇子)
- 家族の場合:世帯主の氏名を中央に書き、「家族一同」「子供一同」などとまとめるのが一般的です。全員の名前を列記すると読みにくくなるため、3名程度までが良いでしょう。
会社名・役職を入れて贈る場合
会社として贈る場合は、会社名と代表者の役職・氏名を記載します。
(例)株式会社〇〇 代表取締役 〇〇 〇〇
会社名が長い場合は、(株)などの略称を用いても問題ありません。
「〇〇一同」として贈る場合
会社の部署や友人グループなどで贈る場合は、「〇〇株式会社 営業部一同」「友人一同」のように記載します。これにより、個々の名前を列記することなく、グループ全体からの弔意を示すことができます。
宗教によって違う?気をつけるべき花の種類とマナー
葬儀の形式は宗教によって異なり、それに応じてふさわしい花も変わってきます。相手の宗教に配慮することは、非常に大切なマナーです。
仏式葬儀の場合
日本の葬儀で最も多い仏式では、菊やユリ、カーネーション、胡蝶蘭などの白い花を基調とした供花が一般的です。ただし、故人が若かった場合や、生前の好みに合わせて淡い色合いの花を加えることも増えています。トゲのあるバラや、香りの強すぎる花、派手な色の花は避けるのが無難です。
神式葬儀の場合
神道(しんとう)の葬儀も、基本的には仏式と同様に白い花が中心となります。菊やユリ、カーネーションなどがよく用いられます。
キリスト教式葬儀の場合
キリスト教式では、日本の「供花」という習慣は本来ありません。しかし、近年では日本の慣習に合わせて受け取ってくれる教会も増えています。
花の種類は、ユリやカーネーション、小菊などの洋花が中心で、色は白が基本です。仏式で使われるような菊だけの和風の供花は避けましょう。
また、スタンド花ではなく、カゴに入ったフラワーアレンジメントの形式が好まれます。名札は付けずに贈るのが一般的です。

宗派が不明な場合はどうすれば良い?
もし宗教・宗派が分からない場合は、白を基調とした洋花(ユリやカーネーションなど)のアレンジメントを贈るのが最も無難です。葬儀社や花屋に「宗教が分からないのですが」と伝えれば、適切な花を見繕ってくれます。
葬儀に花を贈る際のよくある質問(Q&A)
最後に、お花を贈る際によく寄せられる疑問について、Q&A形式でお答えします。
香典も一緒に贈るべき?
必ずしも両方贈る必要はありません。供花は香典の代わりと考えることもできます。遠方で参列できない場合などは、香典の代わりに供花を贈るという選択も一般的です。もし両方贈りたい場合は、ご自身の経済状況や故人との関係性を考慮して判断しましょう。
メッセージカードは添えてもいい?
供花にメッセージカードを添えることは、基本的には問題ありません。ただし、斎場によっては対応できない場合もあるため、事前に葬儀社や花屋に確認すると安心です。メッセージは、長文になりすぎず、「安らかなご永眠をお祈りいたします」といったように、簡潔にお悔やみの言葉を記すのがマナーです。忌み言葉(重ね言葉や直接的な表現)は避けるようにしましょう。
プリザーブドフラワーや造花はNG?
葬儀の場では、生花を贈るのが一般的です。プリザーブドフラワーや造花は、「枯れない」という特徴から「死が長く続く」ことを連想させるため、弔事には不向きとされることが多いです。特別な事情がない限り、生花を選びましょう。
遺族から供花を辞退されたらどうする?
ご遺族から供花の辞退の申し出があった場合は、その意向を尊重し、お花を贈るのは控えましょう。弔意を示したい気持ちは分かりますが、ご遺族の負担を増やさないことが何よりの配慮です。後日、改めてお手紙を送ったり、ご自宅へ弔問に伺ったりするなど、別の形で気持ちを伝える方法を考えましょう。
まとめ
今回は、葬式に花を贈る際のマナーや手配方法について、網羅的に解説しました。
最後に、この記事のポイントを振り返ってみましょう。
- 花の種類:斎場を飾る「供花」、枕元に供える「枕花」がある。
- 費用相場:個人なら5,000円〜20,000円、法人なら15,000円〜30,000円が目安。
- タイミング:訃報を受けたら「供花辞退」の意向を確認し、通夜の数時間前までに手配する。
- 手配方法:初心者や不安な方は、葬儀社に直接依頼するのが最も確実。
- 注意点:宗教・宗派に配慮し、名札の書き方マナーを守る。
たくさんのルールやマナーがあり、難しく感じたかもしれません。しかし、最も大切なのは「故人を悼み、ご遺族をいたわる心」です。その気持ちがあれば、多少の作法の違いはあったとしても、あなたの弔意は必ず伝わります。
この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、故人への最後の想いを形にするお手伝いができたなら、これほどうれしいことはありません。
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