この度は、ご心痛のこと、心よりお察し申し上げます。
大切な方がお亡くなりになり、悲しみの中にいらっしゃる中で、通夜や葬式の日程を考えなくてはならない状況は、本当に大変なこととお察しします。
「亡くなってから、どれくらいの日数で葬儀を行うのが普通なのだろう?」
「火葬場の都合で、葬儀まで何日も日にちが空いてしまうと言われたけれど、大丈夫なのだろうか?」
突然のことで、何から手をつけて良いか分からず、こうした疑問や不安を抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
ご安心ください。
現代の日本では、通夜や葬儀まで日にちが空くことは、決して珍しいことではありません。
この記事では、葬儀業界での経験も踏まえながら、なぜ通夜や葬式まで日にちが空いてしまうのか、その具体的な理由と、日程が空いた場合の過ごし方、そしてご遺体の安置方法について、一つひとつ丁寧に、心を込めてご説明します。
この記事を読み終える頃には、きっとあなたの不安が和らぎ、落ち着いて故人様とのお別れの時間を迎える準備ができるはずです。
亡くなってから通夜・葬式までの一般的な日数と流れ

葬式の知恵袋・イメージ
まずは、一般的な葬儀の日程がどのように組まれるのか、基本的な知識から見ていきましょう。
ご逝去から葬儀までの平均的な日程
もし、すべての段取りがスムーズに進んだ場合、亡くなった翌日にお通夜、その翌々日に葬儀・告別式、そして火葬というのが最短の一般的な流れになります。
しかし、これはあくまで最短のケースです。
現在、特に都市部においては、ご逝去から3日~5日後、長い場合は1週間以上経ってから葬儀を行うことが、ごく当たり前になっています。
日程 | 主な流れ |
1日目 | ご逝去・ご搬送・ご安置、葬儀社との打ち合わせ |
2日目 | (最短の場合)お通夜 |
3日目 | (最短の場合)葬儀・告別式・火葬 |
平均 | ご逝去から3日~5日後に、お通夜・葬儀を行うことが多い |

僕の祖父の時も、火葬場の空きがなく、亡くなってから4日後にお通夜でした。最初は焦りましたが、そのおかげで遠方の親戚も集まることができました。
法律で定められた火葬までの時間とは?
実は、日本の法律(墓地、埋葬等に関する法律)では、「死後または死産後24時間を経過した後でなければ、火葬を行ってはならない」と定められています。
これは、万が一にも蘇生の可能性がないことを確認するための時間であり、どんなに急いでも、亡くなってからすぐに火葬することはできないルールになっています。
この法律があるため、葬儀の日程は最低でも亡くなった翌日以降に設定されることになるのです。
通夜や葬式まで日にちが空くのはなぜ?よくある5つの理由

葬式の知恵袋・イメージ
では、なぜ最短の日程で進められず、日にちが空いてしまうのでしょうか。
その背景には、現代社会が抱える、いくつかのやむを得ない事情が存在します。
最も多い原因は火葬場の混雑・空き状況
葬儀までの日数が空いてしまう最大の理由、それは「火葬場が予約で埋まっている」ことです。
特に人口が集中する都市部では、火葬場の数が需要に追いついておらず、常に混雑している状況です。
高齢化社会の進展により亡くなる方の数が増えている一方で、新しい火葬場の建設はさまざまな理由で進んでいません。
そのため、葬儀の日程は、ご家族の希望よりも「火葬場の予約が取れる日」を基点に決めざるを得ないのが実情なのです。
時期や地域によっては、火葬の予約が1週間先まで埋まっているということも、決して大げさな話ではありません。
「友引」など六曜の日柄を避ける風習
カレンダーで「友引(ともびき)」という日を見たことがあるかと思います。
六曜(ろくよう)という暦の一つで、「友を冥土へ引き寄せる」という迷信から、この日に葬儀を行うことを避ける風習が根強く残っています。
これは科学的根拠のない単なる迷信なのですが、気にする方が多いのも事実です。
何より、友引の日を休業日としている火葬場が全国的に非常に多いため、必然的にその日は葬儀・火葬を行うことができず、日程が一日ずれることになります。
友引の翌日は、その分予約が集中するため、さらに混雑に拍車がかかる傾向があります。

「友引」を避けるのは、故人のためというより、残されたご親族や参列者への配慮という意味合いが強いですね。気にしないという方も増えてはいます。
遠方に住む親族の到着を待つため
故人様やご家族にとって、大切な方々に見送ってもらうことは、何よりも大切なことです。
海外や遠方に住んでいるご親族がいる場合、その方々の到着を待って葬儀の日程を組むことがあります。
飛行機や新幹線の手配、仕事の調整などを考えると、どうしても2~3日の時間が必要になるため、これも日程が空く正当な理由の一つです。
菩提寺や宗教者の都合
特定のお寺とお付き合いがある場合(菩提寺)、そのお寺の僧侶にお経をあげていただくことになります。
しかし、僧侶の方も他のお宅の法要などでスケジュールが埋まっていることがあります。
特に、お盆やお彼岸といった時期は多忙を極めるため、僧侶の都合に合わせて日程を調整した結果、数日間待つというケースも考えられます。
年末年始や連休が重なるケース
年末年始やゴールデンウィークなどの大型連休は、注意が必要です。
多くの火葬場が、1月1日から3日までを休業日としています。
また、役所も休みに入るため、火葬に必要な「死火葬許可証」を発行してもらうための「死亡届」の提出が遅れる可能性もあります。
こうした行政手続きや施設の休業が重なることで、葬儀の日程が大幅に後ろへずれることがあるのです。
葬儀まで日数が空く場合、ご遺体はどうする?安置方法と費用
「何日も日にちが空くとして、故人の身体は大丈夫なのだろうか…」
これは、誰もが抱く最も大きな心配事だと思います。
でも、ご安心ください。
現代ではご遺体を衛生的に、そして尊厳を保ったまま安置するための技術が進んでいます。
主に2つの方法があり、葬儀社の担当者と相談しながら最適な方法を選びます。
自宅で安置する場合の注意点と流れ
もしご自宅に故人様をお連れできるスペースがあれば、住み慣れた家で、ご家族だけでゆっくりと最後の時間を過ごすことができます。
- メリット: 周りを気にせず、いつでも故人様のそばにいられる。面会時間に制限がない。
- 注意点:
- 室温管理: エアコンを使い、部屋をできるだけ涼しく保つ必要があります。
- スペースの確保: 故人様を寝かせるお布団と、枕飾りなどを置くスペースが必要です。
- ドライアイス: ご遺体を低温に保つため、葬儀社が用意するドライアイスが不可欠です。
葬儀社の担当者が、定期的にドライアイスの交換やご遺体の状態の確認に訪れてくれるので、すべてを自分たちで行うわけではありません。
斎場や専門の安置施設を利用する場合
ご自宅での安置が難しい場合(マンションの規約、スペースがないなど)は、葬儀社の会館や、専用の安置施設を利用します。
- メリット: 温度管理などが徹底された専用施設なので、衛生面での安心感が非常に高い。
- 注意点:
- 費用: 施設の利用料が1日単位でかかります。(相場:1日あたり約1万円~3万円)
- 面会時間: 他のご家族も利用するため、面会できる時間が決められている場合があります。

どちらが良いという正解はありません。故人様が「家に帰りたい」と望んでいたか、ご家族がどう過ごしたいかで決めるのが一番だと思います。
ドライアイスなど遺体保全にかかる追加費用
葬儀までの日数が延びると、その分、ご遺体を保全するための費用が追加で必要になります。
最も重要なのがドライアイスの費用です。
これは、ご遺体の腐敗を防ぐために絶対に必要な処置です。
- 費用相場: 1日あたり約7,000円~1万円程度
- 確認事項: 葬儀プランの中に「〇日分のドライアイス費用」が含まれていることが多いです。それを超えた分が追加料金となるのか、事前に必ず葬儀社に確認しましょう。
他にも、より長期間の安置が必要な場合は、「エンバーミング」という、ご遺体に防腐・殺菌・修復などを施す特別な技術もあります。
通夜・葬式の日程を決める手順と空いた時間に行うべきこと
葬儀までの日にちが空いてしまうことは、決してただ待つだけの時間ではありません。
むしろ、故人様と心ゆくまで向き合い、お別れの準備を丁寧に進めるための、かけがえのない時間と捉えることができます。
葬儀社との打ち合わせで決めること
まずは、信頼できる葬儀社を決め、担当者と打ち合わせを行います。
悲しみの中で大変ですが、ここで今後の流れがすべて決まります。
- 日程の確定: 火葬場の空き状況と、親族や宗教者の都合をすり合わせ、通夜・葬儀の日を決定します。
- 場所の決定: 葬儀を行う斎場(セレモニーホール)を決めます。
- 葬儀形式の決定: 一般葬、家族葬、一日葬など、どのような形でお見送りをするかを決めます。
- 費用の確認: 見積もりを提示してもらい、内容をしっかりと確認します。

分からないことは、どんな些細なことでも葬儀社の担当者に質問してください。良い担当者なら、あなたの不安に誠心誠意向き合ってくれるはずです。
親族や関係者への連絡と日程調整
日程が決まったら、速やかに親族や関係者に連絡をします。
- 連絡の優先順位: 親族 → 特に親しかった友人・知人 → 会社・学校関係 → 町内会など
- 伝える内容: 故人の氏名、亡くなった日時、喪主の氏名、通夜・葬儀の日時と場所を正確に伝えます。
遺影写真の準備や死亡届の手続き
空いた時間を使って、事務的な準備も進めておきましょう。
- 遺影写真の選定: 故人様らしい、一番良い表情の写真を探しましょう。ピントが合っていれば、スナップ写真からでも綺麗に引き伸ばせます。
- 死亡届の提出: 葬儀社が代行してくれることが多いですが、自分で提出することも可能です。これにより「死火葬許可証」が発行されます。
空いた時間を「故人様を偲ぶ、かけがえのない時間」に
手続きや準備に追われる日々ですが、ぜひ意識して「故人様と向き合う時間」を作ってみてください。
これは、日にちが空いたからこそ持てる、貴重なグリーフケア(悲しみを癒すプロセス)の時間です。
- 思い出の品を飾る: 故人様のお部屋を片付けたり、愛用していた品や趣味のものを枕元に飾ってあげましょう。
- 好きだった音楽を流す: 故人様が好きだった音楽を静かに流し、在りし日の姿を思い出してみてはいかがでしょうか。
- 手紙を書く: 口では伝えきれなかった感謝の気持ちを、手紙に綴ってみるのも良いでしょう。その手紙は、出棺の際に棺に入れることもできます。
- 思い出を語り合う: ご家族で集まり、故人様の思い出話をたくさんしてください。笑ったり、泣いたりするその時間が、何よりの供養になります。
通夜・葬式の日程に関するよくある質問
最後に、多くの方が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。
Q. 亡くなってから何日までなら安置できますか?
A. 適切な処置を施せば、1週間~10日程度は問題なく安置できます。
ドライアイスによる保冷が基本ですが、状態によっては「エンバーミング」という特別な処置を行うことで、さらに長期間、お体を綺麗に保つことが可能です。季節やご遺体の状態にもよりますので、詳しくは葬儀社の担当者にご相談ください。
Q. 通夜まで3日以上あくのは普通ですか?
A. はい、現代の日本では決して珍しいことではなく、むしろ「普通」になりつつあります。
特に都市部では、火葬場の混雑により3日~5日、あるいはそれ以上空くことが一般的です。焦る必要はまったくありませんので、ご安心ください。
Q. お通夜なしで葬儀・火葬のみ(直葬)はできますか?
A. はい、可能です。
お通夜や告別式を行わず、ごく限られた親しい方のみで火葬場へ向かい、お見送りをする「直葬(ちょくそう)」や「火葬式」という形式があります。費用を抑えられる、参列者の負担が少ないといったメリットがありますが、お別れの時間が短くなるという側面もあります。

どの形式が良いかは、故人様の遺志や、ご家族の考え方次第です。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、後悔のない選択をしてくださいね。
まとめ
この記事では、通夜や葬式まで日にちが空いてしまう理由と、その間の対応について詳しく解説してきました。
最後に、大切なポイントをまとめます。
- 葬儀まで3日~5日空くのは現代では普通のこと。
- 最大の理由は「火葬場の混雑」であり、やむを得ない事情。
- ご遺体の安置は、自宅か専用施設で、専門家が適切に行ってくれるので安心。
- 日数が空いた分、ドライアイスなどの追加費用がかかる場合がある。
- 空いた時間は、故人と心ゆくまでお別れをするための、かけがえのない時間と捉えることができる。
突然の訃報に接し、葬儀までの日程が空いてしまうと、多くの方が不安や焦りを感じてしまいます。
しかし、その時間は決して無駄な時間ではありません。
慌ただしくお別れをするのではなく、故人様との思い出をゆっくりと振り返り、感謝を伝え、ご自身の心を整えるための大切な時間です。
どうか、そのかけがえのない時間を大切に過ごし、心ゆくまでのお見送りをしてあげてください。
この記事が、あなたの不安を少しでも和らげる一助となれたなら、幸いです。
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