突然の訃報に接し、葬儀に参列する際、「生花(せいか)」という札が飾られた大きな花を目にすることがあります。
その時、「この『生花』、なんて読むのが正しいんだろう?」と、ふと疑問に思った経験はありませんか。
「せいか」なのか、「しょうか」なのか。
些細なことかもしれませんが、故人様を偲ぶ大切な場だからこそ、正しい知識を身につけておきたいものですよね。
この記事では、そんなあなたの疑問に真摯にお答えします。
葬儀における「生花」の正しい読み方から、よく似た「供花(きょうか)」や「献花(けんか)」との意味の違い、さらには実際に贈る際のマナーや費用相場、手配の方法まで、一つひとつ丁寧に解説していきます。
この記事を読み終える頃には、あなたは自信を持って、弔意を花に託すことができるようになっているはずです。
大切なのは、故人を悼み、ご遺族を思いやる温かい心。
その心を正しく伝えるための知識を、一緒に深めていきましょう。
葬儀における「生花」の正しい読み方は「せいか」

葬式の知恵袋・イメージ
結論から申し上げますと、葬儀の場で使われる「生花」は「せいか」と読むのが一般的であり、正しいとされています。

僕も最初は「しょうか」だと思っていました。でも言葉の背景を知ると「せいか」という響きに故人を偲ぶ心が込められている気がしますね。
なぜ「せいか」と読むのが適切なのでしょうか。
それには、言葉が持つニュアンスの違いが関係しています。
「しょうか」と読む場合との意味の違い
「生花」を「しょうか」と読む場合、これは一般的に「生け花(いけばな)」や「華道」のことを指します。
「しょうか」は、草木を花器に挿して形を整え、その美しさを鑑賞する芸術的な意味合いが非常に強い言葉です。
もちろん、そこには命への敬意も含まれていますが、主眼は「美の追求」や「様式美」に置かれています。
一方、葬儀で使われる「せいか」は、「生きた花」「自然のままの花」という意味合いで用いられます。
これは、人の手が加わった芸術作品としてではなく、命ある存在としての花そのものを指しているのです。
なぜ葬儀では「せいか」と読むのが一般的なのか
葬儀の場では、人の手による華美な装飾よりも、ありのままの命の尊さや、いずれは枯れてゆく命のはかなさが大切にされます。
「せいか」という言葉には、造花ではない、今まさに命が宿っている花を故人様に捧げることで、心からの弔意と敬意を示す、という深い意味が込められています。
はかなくも美しい「せいか」を供えることで、故人の生前の姿を偲び、安らかな眠りを祈る。
だからこそ、葬儀の場では「せいか」という読み方が選ばれているのです。
「生花」が指し示すものとは
葬儀の文脈で「生花」という場合、具体的には祭壇の両脇などに飾られる、札の立った大きなスタンド花を指すことがほとんどです。
これらは故人と縁のあった方々から贈られるもので、葬儀の場を飾り、故人を偲ぶ気持ちを形として表す大切な役割を担っています。
「生花」と「供花(きょうか)」はどう違う?献花との意味も解説

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「生花」とよく似た言葉に「供花」や「献花」があります。
これらは混同されがちですが、それぞれに明確な意味と役割の違いがあります。
この違いを知っておくことは、いざという時に恥をかかないための大切なマナーです。

言葉は似ていますが役割が全く違います。間違えると失礼にあたる可能性もあるので、しっかり区別しておきましょう。
祭壇に供える「供花(きょうか・くげ)」との関係性
供花(きょうか、または「くげ」とも読む)は、故人に供える花の総称です。
つまり、「生花(せいか)」は、数ある「供花」の一種と考えることができます。
- 供花(きょうか): 故人を弔うために供えられる花全般を指す広い言葉。祭壇のスタンド花、アレンジメントフラワー、枕花などすべてを含む。
- 生花(せいか): 供花の中でも、特に祭壇脇に飾られる札付きのスタンド花を指して使われることが多い言葉。
葬儀社とのやり取りなどでは、スタンド花の総称として「供花」という言葉が使われることも多く、厳密な使い分けはされていませんが、「生花」は供花の一部であると覚えておくと良いでしょう。
キリスト教式などで見られる「献花(けんか)」との違い
献花(けんか)は、花を「贈る」のではなく、参列者一人ひとりが祭壇に花を捧げる「行為」そのものを指します。
仏式の葬儀における「お焼香」の代わりとして、キリスト教式の葬儀や無宗教形式のお別れ会などでよく行われます。
通常、会場の入口で白いカーネーションや菊などの花を一本受け取り、自分の順番が来たら祭壇前の献花台に静かに捧げ、故人に祈りを捧げます。
つまり、「生花」や「供花」が故人に贈る「モノ」であるのに対し、「献花」は参列者が弔意を示す「コウイ(行為)」である、という決定的な違いがあります。
枕花(まくらばな)とは?贈るタイミングの違い
枕花(まくらばな)は、その名の通り、故人様が亡くなられてからお通夜までの間、ご遺体が安置されている枕元に供える花のことです。
比較的小さなアレンジメントフラワーで、主に近親者や特に親しかった友人が、訃報を受けてすぐに「取り急ぎ弔意を」という気持ちで贈ります。
これらの違いを分かりやすく表にまとめました。
種類 | 読み方 | 意味・役割 | 贈るタイミング |
生花 | せいか | 祭壇脇に飾るスタンド花など | 通夜・告別式 |
供花 | きょうか・くげ | 故人に供える花の総称 | 通夜・告別式 |
献花 | けんか | 参列者が捧げる花(行為) | 告別式中 |
枕花 | まくらばな | 枕元に供える小さな花 | 訃報後すぐ〜通夜前 |
葬儀で生花を贈る際のマナーと費用相場

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故人を偲ぶ気持ちを「生花」に託して贈りたいと考えたとき、気になるのがマナーや費用相場です。
相手に失礼がなく、かつ自分の弔意をしっかりと伝えるために、基本的な知識を押さえておきましょう。
生花の費用相場はいくら?1基と1対(2基)の値段の違い
葬儀で贈られるスタンドタイプの生花は、「基(き)」という単位で数えます。
- 1基(いっき): 費用の相場は 15,000円~30,000円 程度が一般的です。スタンド花が一つになります。
- 1対(いっつい): 1基を2つセットにしたもので、祭壇の両脇に対で飾られます。費用は単純に倍となり、30,000円~60,000円 程度が相場です。
どちらを選ぶかは、故人様との関係性の深さによって決めるのが良いでしょう。
誰が出すもの?親族・会社・友人など関係性別の考え方
生花を誰が、どの単位で出すかには、ある程度の慣習があります。
- 親族(子ども一同、兄弟一同など): 故人との関係が深い親族は「1対(2基)」で贈ることが多いです。
- 会社・団体: 会社名や部署名、団体名で出す場合は「1基」が一般的です。
- 友人・知人: 個人的な付き合いのあった友人や知人も「1基」で贈るのが通常です。複数人で出す場合は「友人一同」として1基を贈ります。
これはあくまで一般的な目安であり、最も大切なのは弔意を示す気持ちです。
名札(芳名札)の書き方と連名の場合の注意点
生花には、誰から贈られたものかを示す「芳名札(ほうめいふだ)」が立てられます。
この書き方にもマナーがあります。
- 個人の場合: シンプルに氏名のみを記載します。
- 会社の場合: 「会社名」「役職名」「氏名」の順で記載します。会社名だけでも問題ありません。
- 連名の場合: 右側から序列の高い順に名前を記載します。例えば、会社の役員で連名にする場合は、社長、専務、常務…という順番になります。特に序列がない友人同士などの場合は、五十音順で記載するのが一般的です。
- 一同で出す場合: 「〇〇株式会社 営業部一同」「〇〇大学 友人一同」のように記載します。
名札の書き方で迷った場合は、注文する葬儀社や花屋に相談すれば、適切に対応してくれます。
生花を辞退された場合の対応
近年、家族葬の増加などに伴い、「誠に勝手ながら、御香典、御供花、御供物の儀は固くご辞退申し上げます」と、遺族が生花を含む供物を辞退されるケースが増えています。
これは、参列者への返礼の負担を減らしたい、葬儀を身内だけで静かに行いたい、といったご遺族の配慮によるものです。
このような案内があった場合は、ご遺族の意向を最大限に尊重し、生花を贈るのは控えましょう。
「何かせずにはいられない」という気持ちも分かりますが、その意向に沿うことが何よりの弔意の示し方となります。
その場合は、香典で弔意を表すか、後日改めてお悔やみの言葉を伝えるのが良いでしょう。

親しい間柄だと気持ちが先行しがち。でも一番大事なのは遺族の気持ちを尊重すること。グッとこらえるのも優しさです。
葬儀の生花を手配する方法と注意点

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実際に生花を贈ることを決めたら、次は手配です。
スムーズに、そして確実に故人のもとへ届けるために、いくつかのポイントと注意点があります。
いつまでに送る?お通夜・告別式に間に合わせるタイミング
生花は、お通夜が始まる前までに斎場に届くように手配するのが理想です。
- お通夜に間に合わせる場合: お通夜当日の午前中までに注文を完了させましょう。
- 告別式に間に合わせる場合: やむを得ずお通夜に間に合わない場合は、告別式の開始数時間前には届くように手配します。
あまりにギリギリだと、名札の準備や設置が間に合わない可能性があるため、訃報を受けたらなるべく早めに行動するのが賢明です。
どこに頼む?葬儀社や花屋への注文方法
生花の手配先は、主に「葬儀社」か「花屋」になりますが、最も確実で推奨されるのは、その葬儀を執り行っている葬儀社に直接依頼する方法です。
【葬儀社に依頼するメリット】
- 斎場の雰囲気や大きさに合わせた、統一感のある生花を用意してくれる。
- 宗派や宗教に合った花を選んでくれる。
- 設置場所やタイミングを熟知しているため、スムーズに設置してもらえる。
- 喪主や斎場の情報を正確に把握しているため、名札や届け先の間違いがない。
訃報の連絡を受けた際に、葬儀を担当する葬儀社の連絡先を確認し、直接電話で「供花(生花)をお願いしたい」と伝えれば、必要な情報を聞き取ってくれてスムーズに手配が完了します。
もし自分で懇意にしている花屋に依頼する場合は、斎場の名前と住所、日時、喪主の氏名、そして「外部からの花の持ち込みが可能かどうか」を事前に葬儀社に確認してから注文しましょう。

自分で花屋を手配するのも素敵ですが、葬儀社に任せるのが一番スムーズで確実。遺族に余計な手間をかけさせない配慮にもなりますよ。
贈ってはいけない花はある?宗教・宗派による違い
弔いの花としてふさわしくないとされる花も存在します。
- トゲのある花: バラ、アザミなど。殺生を連想させるため避けられます。
- 香りの強い花: ユリなど。香りが強すぎると気分が悪くなる方もいるため、特に狭い空間では配慮が必要です(ただし、キリスト教式ではよく使われます)。
- 毒のある花: スズラン、彼岸花など。
- 派手な色の花: 赤やオレンジなどの原色系は、お祝い事を連想させるため基本的には避けます。
一般的には、白を基調とし、菊や蘭、カーネーション、トルコギキョウなど、落ち着いた色合いの花が選ばれます。
また、宗教によっても違いがあり、例えばキリスト教では菊をあまり使わなかったり、仏教の特定の宗派では樒(しきみ)が重要視されたりします。
こうした細かな点も、葬儀社に依頼すればすべて配慮してくれるため安心です。
手配する前に遺族(喪主)へ確認すべきこと
最も重要な注意点として、必ず生花を贈る前に、ご遺族の意向を確認することです。
前述の通り、生花を辞退されている場合があるからです。
ご遺族に直接連絡するのがためらわれる場合は、葬儀社に問い合わせれば「供花は受け付けていらっしゃいますか?」と確認してくれます。
このワンクッションが、ご遺族への負担を減らす大きな配慮となります。
まとめ

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今回は、葬儀における「生花」の読み方から、その背景にある意味、そして贈る際の実践的なマナーまでを詳しく解説してきました。
最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。
- 葬儀の「生花」の正しい読み方は「せいか」です。これは「生きた花」を意味し、故人への敬意を表します。
- 「生花」は「供花(きょうか)」の一種で、主にスタンド花を指します。参列者が捧げる行為である「献花(けんか)」とは全く異なります。
- 費用相場は1基15,000円~30,000円ほど。故人との関係性に応じて選びましょう。
- 手配は、葬儀を執り行っている葬儀社に直接依頼するのが最も確実で安心です。
- 何よりも大切なのは、生花を贈る前に必ずご遺族の意向を確認することです。辞退されている場合は、その気持ちを尊重しましょう。
「生花」という一つの言葉にも、私たちの知らない深い意味や、故人を思いやる心が込められています。
正しい知識とマナーは、あなたのその温かい心を、より確かな形で故人様とご遺族に届けるための道しるべとなります。
形だけにとらわれるのではなく、その背景にある心を大切にしながら、最後のひとときを心静かにお見送りしたいものですね。
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