突然の訃報に際し、お葬式に参列する準備を進める中で、「会場への行き帰りは、どんな服装をすればいいのだろう?」と、ふと手が止まってしまった経験はありませんか。
「喪服のまま電車に乗るのは、周りの目が気になる…」
「遠方から向かうけれど、新幹線の中ではどんな格好が正解?」
大切な故人様とのお別れの場だからこそ、失礼があってはならないと、細やかな点まで気になってしまうのは、とても自然なことです。
この記事では、そんなあなたの不安や疑問に一つひとつ丁寧にお答えしていきます。
葬儀の行き帰りにおける服装の基本マナーから、状況に応じた具体的な対応策、そして着替えの場所まで、この記事を読み終える頃には、心のもやもやが晴れ、安心して故人様を送り出す準備ができるはずです。
葬式の行き帰りは喪服?平服?知っておきたい基本マナー

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まず最初に、最も気になる「行き帰りは喪服なのか、それとも平服(私服)なのか」という根本的な疑問について、その考え方の基本を解説します。
喪服での移動が失礼にあたらないか心配な方へ
結論から申し上げますと、ご自宅から葬儀会場へ喪服のまま移動することは、決してマナー違反ではありません。
むしろ、特に近隣の会場へ向かう場合は、喪服で移動する方のほうが多いでしょう。
ただし、その服装が「故人を悼むためのものである」ということを忘れない心遣いが大切になります。
なぜ「行き帰り」の服装が重要なのか
行き帰りの服装がなぜこれほどまでに気にされるのか、その理由は大きく二つあります。
一つは「周囲への配慮」です。
喪服は非日常的な服装であり、街中で見かけると多くの人が「誰か不幸があったのだな」と察します。
その姿で派手な行動をとったり、葬儀にふさわしくない場所に立ち寄ったりすることは、周囲に違和感を与え、故人様やご遺族の品位を損ないかねません。
もう一つは「ご遺族への配慮」です。
ご遺族は、大切な方を亡くされた深い悲しみの中にいらっしゃいます。
参列者がマナーに沿った適切な振る舞いをすることで、ご遺族は余計な気遣いをすることなく、安心して故人様とのお別れに集中できるのです。
行き帰りの服装は、故人様への敬意を示すだけでなく、残された方々を思いやる気持ちの表れでもあるのです。

僕も初めての参列の時、喪服で電車に乗るのに少し戸惑いました。でも、背筋を伸ばして静かに乗車すれば、誰も不快には思いません。大切なのは気持ちですね。
【行き】葬儀会場までの服装|喪服で移動しても良い?

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それでは、具体的に「行き」の服装について、様々なシチュエーション別に見ていきましょう。
自宅から直接向かう場合の服装
ご自宅から自家用車やタクシー、公共交通機関を使って直接会場へ向かう場合は、喪服を着用して移動するのが最も一般的です。
ただし、移動中は以下の点に少しだけ気を配ると、よりスマートです。
- アクセサリー類: 結婚指輪以外の光るアクセサリー(イヤリング、ピアス、ネックレスなど)は、会場に着いてから、もしくは外したまま移動しましょう。
- メイク: 女性の場合、派手なメイクは避け、ナチュラルな「片化粧」を意識しますが、移動中は普段通りでも構いません。会場の化粧室などで手早く直すと良いでしょう。
- ネクタイ: 男性の黒ネクタイは、会場に着いてから締める方もいます。特に夏場など、移動中も少しでも快適に過ごすための工夫です。
遠方から参列する場合(新幹線・飛行機)の服装のポイント
新幹線や飛行機、長距離バスなどを利用して遠方から駆けつける場合は、少し事情が異なります。
長時間の移動を喪服で過ごすのは、身体的な負担が大きく、またシワの原因にもなります。
そのため、移動中は平服で過ごし、到着後に着替えるのがおすすめです。
- 移動時の服装: 黒、紺、グレーといったダークカラーの落ち着いた私服(ワンピース、アンサンブル、スーツなど)を選びましょう。ジーンズやTシャツ、派手な柄物は避けるのが賢明です。
- 喪服の持ち運び: 喪服はシワにならないよう、ガーメントバッグに入れて持参するのが最適です。スーツなどを購入した際についてくる持ち運び用のバッグがこれにあたります。
- 着替えの場所: 到着地の駅や空港の更衣室、宿泊先のホテル、そして葬儀会場の更衣室などで着替えます。
職場など外出先から直接向かう場合
お通夜などに多いケースですが、仕事や用事のあと、一度自宅へ帰らずに直接会場へ向かう場合も、遠方からの参列と考え方は似ています。
可能であれば、会社のロッカーなどに事前に喪服を置いておき、近くの着替えスペースで着替えてから向かうのが理想的です。
もし準備が間に合わず、ダークカラーのビジネススーツなどで参列する場合は、それでも構いません。「急いで駆けつけた」という気持ちが伝わることが大切です。

遠方の友人の葬儀に参列した際、ガーメントバッグは本当に重宝しました。シワひとつなく喪服を着られて、気持ちも引き締まりましたよ。一つ持っておくと安心です。
【帰り】葬儀が終わった後の服装|喪服のまま帰っても良い?

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葬儀・告別式が終わり、会場をあとにする際の服装についても確認しておきましょう。
葬儀・告別式から直接帰宅する場合
行きと同様に、喪服のまま帰宅して全く問題ありません。
多くの方がそのまま帰路につきますので、何も心配することはありません。
食事(精進落とし)がある場合の服装
葬儀後に「精進落とし」などの会食の席が設けられている場合も、当然ながら喪服のまま参加します。
服装を変える必要はありません。
帰りに他の場所に立ち寄る際の注意点
ここが最も注意したいポイントです。
葬儀の帰り道に、喪服のまま買い物や食事、レジャー施設などに立ち寄ることは、原則として避けるべきです。
これはマナー違反と見なされる可能性が非常に高い行為です。
故人を悼むための服装で、日常の楽しみを謳歌する姿は、事情を知らない周囲の人々から見ても気分の良いものではありませんし、何より故人様やご遺族に対して失礼にあたります。
どうしても必要なものを購入する必要がある場合は、人目につきにくいお店を選ぶ、コートなどで喪服を隠すといった配慮を心がけましょう。
一番良いのは、一度帰宅して着替えてから、改めて出かけることです。
葬儀での着替えはどこでする?タイミングと場所の選択肢

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遠方からの参列や、平服での移動を選んだ場合、どこで着替えるかは重要な問題です。慌てずに済むよう、事前に確認しておきましょう。
主な着替え場所の選択肢
- 葬儀会場の更衣室・控室
- 宿泊先のホテル
- 駅や空港の更衣室(フィッティングボード)
- 自家用車の車内
- 近隣の多目的トイレや個室の広いトイレ
葬儀会場の更衣室を利用する
最も確実で便利なのが、葬儀会場に用意されている更衣室や親族控室の一部を利用させてもらう方法です。
ただし、すべての会場に参列者用の更衣室があるとは限りません。
事前に着替えられる場所を確認する方法
最も確実なのは、葬儀を執り行う葬儀社や会場に直接電話で問い合わせることです。
「遠方から参列するのですが、着替えをさせていただくスペースはありますでしょうか?」と尋ねれば、親切に教えてくれるはずです。
その際、利用可能な時間帯も確認しておくと、よりスムーズです。
自家用車の中で着替えるのはあり?
プライバシーが確保できるのであれば、自家用車の中で着替えることも可能です。
ただし、狭い空間での着替えは衣服にシワがつきやすい点に注意が必要です。
また、駐車場が人目につきやすい場所にある場合は、外から見えないようサンシェードなどで工夫しましょう。
近くの多目的トイレやレンタルスペース
最終手段として、駅などの多目的トイレや、時間貸しのレンタルスペースを利用する方法もあります。
ただし、公共のトイレを長時間占有するのは他の利用者の迷惑になりますので、手早く済ませるのがマナーです。

事前に会場へ電話一本入れておくだけで、当日の安心感が全く違います。「控室をお使いください」と言ってもらえると、心からホッとしますよ。遠慮せず確認しましょう。
【男女別】行き帰りの服装で気をつけるべき点

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移動中や着替えの際に特に気をつけたいポイントを、男女別にまとめました。
男性のポイント | 女性のポイント | |
服装 | 移動中はジャケットを脱いでもOK。ネクタイも会場で締めるなど工夫を。カフスボタンは外しておくのが無難。 | ワンピースやアンサンブルはシワになりにくい素材を選ぶと良い。ストッキングの予備をバッグに入れておくと安心。 |
小物 | 光るバックルのベルトは避ける。ビジネスバッグとは別に、布製の小さなクラッチバッグなどがあるとスマート。 | 移動中は結婚指輪以外のアクセサリーは外しておく。光沢のあるバッグや金具が目立つものは避ける。 |
その他 | 髪にワックスなどをつけすぎない。香りの強い整髪料は控える。 | 香水はつけないのがマナー。メイクは会場で直すことを前提に、移動中は薄めでもOK。 |
【季節・状況別】コートや持ち物など行き帰りの服装Q&A

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最後に、季節や状況によって生まれる細かな疑問について、Q&A形式でお答えします。
Q. 冬のコートはいつ脱ぐ?色や素材の選び方
A. コートの色は、黒、濃紺、チャコールグレーなどのダークカラーが基本です。素材はカシミアやウールなどが望ましいですが、派手でなければ一般的なものでも問題ありません。ただし、毛皮や革製品は殺生を連想させるため、厳禁です。
コートを脱ぐタイミングは、会場の敷地に入る前、もしくは建物の玄関に入る前です。脱いだコートは裏地が見えないように内側にたたみ、腕にかけて持ちます。会場にクロークがあれば、そこに預けましょう。
Q. 夏の暑い時期、上着なしでの移動は大丈夫?
A. はい、移動中にジャケットを脱いで手に持って歩くことは問題ありません。
ただし、会場内では必ずジャケットを着用するのがマナーです。クールビズが浸透していますが、弔事の場では適用されないと心得ましょう。
Q. お通夜の行き帰りの服装マナー
A. お通夜は「訃報を聞き、急いで駆けつけた」という弔意を示す場です。
そのため、必ずしも喪服である必要はなく、ダークカラーのスーツやワンピースといった「平服」での参列も許容されています。行き帰りもその服装のままで問題ありません。
Q. 子供(学生)の行き帰りの服装はどうする?
A. 学生の場合は、学校の制服が正式な礼服となります。
行き帰りも制服のままで構いません。制服がない小さなお子様の場合は、白いシャツやブラウスに、黒や紺、グレーのズボンやスカートといった、落ち着いた色の服装をさせてあげましょう。
Q. バッグや靴、アクセサリーなど小物類の選び方
A. 小物類も服装と同様に、光沢がなく、殺生を連想させないものが基本です。
- バッグ: 黒の布製が基本。光る金具がないシンプルなデザインを選びましょう。
- 靴: 黒の革靴が基本ですが、光沢の少ないものを選びます。女性は高すぎるヒールやオープントゥは避けましょう。
- アクセサリー: 結婚指輪以外は外します。女性がつける場合、一連のパール(白・黒・グレー)のネックレスかイヤリングのどちらか一つ、とされています。
まとめ

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大切な故人様とのお別れの時間を、穏やかな気持ちで過ごすために、「行き帰りの服装」という小さな不安は、ここで解消しておきましょう。
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 基本は喪服で移動してOK。 ただし、TPOをわきまえる心遣いを忘れない。
- 遠方からの場合は「平服で移動し、現地で着替える」のがスマート。
- 着替えは「会場の更衣室」がベスト。 事前に電話で確認するのが最も確実。
- 帰りに喪服で寄り道するのはNG。 一度帰宅してから出かけるのがマナー。
- 最も大切なのは「故人を悼み、ご遺族を思いやる気持ち」。
服装のマナーは、あくまで故人様とご遺族への敬意を表すための一つの形です。
マナーに縛られすぎて、大切な気持ちを見失ってしまっては本末転倒です。
この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、心静かに故人様を送り出すための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
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