突然の訃報に際し、お悔やみの気持ちをどのように表せば良いか、戸惑うことは誰にでもあるかと思います。
特に「香典」に関するマナーは細やかで、中でも「ピン札(新札)を使っても良いのだろうか?」という疑問は、多くの方が抱く不安の一つではないでしょうか。
この記事では、そんなあなたの不安に寄り添い、香典にピン札がなぜ避けられるのかという理由から、手元にピン札しかない場合の具体的な対処法、そして知っておくべき香典の基本マナーまで、一つひとつ丁寧に解説していきます。
大切なのは、故人を悼むあなたのそのお気持ちです。
マナーの背景にある意味を理解すれば、自信を持ってスマートに対応できますので、どうぞご安心ください。
葬式の香典でピン札(新札)がマナー違反とされる理由

葬式の知恵袋・イメージ
結論から申し上げますと、お葬式の香典にピン札(新札)を包むのは、一般的に避けるべきとされています。
これは、日本の古くからの慣習や、相手を気遣う「おもいやり」の心に根差したものです。
ピン札は、銀行などで前もって準備しないと手に入りにくいものです。
そのため、香典にピン札を入れると、「不幸を予期して、あらかじめ準備していた」という印象を相手に与えかねない、と考えられているのです。
「突然の訃報に、慌てて駆けつけました」という気持ちを示すために、あえて使用感のある旧札を包むのが良い、とされています。
これは、あくまで故人やご遺族の気持ちに寄り添うための配慮であり、決して厳格なルールというわけではありません。
しかし、こうした細やかな心遣いが、悲しみの中にいるご遺族の心を慰める一助となるのです。

僕も初めて友人の葬儀に参列した際、財布に新札しかなく焦りました。マナーの理由を知ると、単なる形式ではなく「相手への気遣い」なのだと腑に落ちましたね。
【手元にピン札しかない】慌てないための具体的な対処法
とはいえ、急なことでどうしても手元にピン札しかない、という状況は十分にあり得ます。
そのような場合でも、慌てる必要はありません。
いくつかの簡単な対処法を知っておけば、マナーに沿った形で香典を準備することができます。
あえて自分で折り目を付けてから香典袋に入れる
最も簡単で確実な方法が、ピン札に一度、自分で折り目を付けることです。
真新しいお札でも、一度二つに折ることで「準備していたものではない」という意思表示になります。
【折り目の付け方】
- お札を縦に持ち、中央で一度、くっきりと二つ折りにします。
- すぐに広げれば、自然な折り目がついた状態になります。
これだけで、ピン札が持つ「新しさ」が和らぎ、香典として包むのにふさわしいお札になります。
わざとクシャクシャにする必要はなく、きれいな折り目を一度つけるだけで十分です。
新札をきれいな旧札に両替する方法
もし時間に少しでも余裕があれば、両替を試みるのも一つの手です。
銀行の窓口が開いている時間であれば、持っているピン札を旧札に両替してもらえます。
ATMで自分の口座に一度預け入れ、再度引き出すことで、機械の中から出てくるお札が旧札になっている可能性もあります。
ただし、ATMから必ず旧札が出てくるとは限らないため、あくまで最終手段の一つとして考えておくと良いでしょう。
香典にはどんなお札を入れるのが適切?旧札の選び方
では、逆にどのようなお札が香典に最もふさわしいのでしょうか。
理想は、「ある程度の使用感はあるけれど、清潔な旧札」です。
新札のようにまっすぐではないけれど、シワや汚れがひどくない、きれいなお札を選びましょう。
あまりにも汚れていたり、破れていたりするお札は、かえって相手に不快な思いをさせてしまう可能性があるため、避けるのが賢明です。
故人への最後の贈り物という意味合いも込めて、敬意の気持ちが伝わるような、きれいな旧札を選んで包むことを心がけましょう。

「旧札なら何でも良い」わけではないのがポイント。故人への敬意を忘れず、受け取るご遺族が気持ちよく受け取れるお札を選ぶ、という視点が大切だと思います。
これだけは押さえたい!香典に関するお金の基本マナー
お札の種類以外にも、香典には知っておきたい大切なマナーがいくつかあります。
ここで基本をしっかり押さえておきましょう。
【図解】香典袋へのお札の正しい入れ方・向き
お札を香典袋(中袋)に入れる際には、向きに気を配るのがマナーです。
- お札の枚数は1枚にするのが理想
- 複数枚になる場合は、お札の向きをすべて揃えて入れます。
- お札の肖像画(顔)が描かれている面を裏側(中袋の裏面)に向ける
- 肖像画が下側になるように入れる
これは、「悲しみに顔を伏せる」という意味合いが込められています。
関係性で変わる香典の金額相場と避けるべき数字
香典に包む金額は、故人との関係性やご自身の年齢によって変わります。
以下に一般的な相場をまとめましたので、参考にしてください。
故人との関係性 | あなたの年齢 | 金額の相場 |
両親・義両親 | 20代 | 3万円~10万円 |
30代 | 5万円~10万円 | |
40代以降 | 10万円以上 | |
兄弟・姉妹 | 20代 | 3万円~5万円 |
30代以降 | 5万円 | |
祖父母 | 20代 | 1万円 |
30代 | 1万円~3万円 | |
40代以降 | 3万円~5万円 | |
その他の親族 | – | 5千円~1万円 |
友人・知人 | – | 5千円~1万円 |
会社関係者 | – | 5千円~1万円 |
また、「4(死)」や「9(苦)」を連想させる金額は避けるのがマナーです。
4,000円や9,000円、また4万円といった金額は包まないようにしましょう。

夫婦で参列する場合、香典は世帯主の名前で一つにまとめるのが一般的。金額は1人分の1.5~2倍程度を目安にすると良いでしょう。
香典袋の選び方と表書き・中袋の書き方(薄墨)
香典袋の表書きは、薄墨の筆ペンやペンで書くのが正式なマナーです。
薄墨には、「悲しみの涙で墨が薄まってしまった」「急なことで墨をする時間がなかった」といった意味が込められています。
【表書き】
- 仏式(多くの宗派):「御霊前」と書くのが最も一般的です。(ただし、浄土真宗などでは「御仏前」を用います)
- キリスト教式:「お花料」
- 神式:「御玉串料(おたまぐしりょう)」
宗教・宗派が不明な場合は、「御霊前」としておけば、ほとんどの場合で失礼にあたることはありません。
名前は水引の下、中央にフルネームで書きます。
【中袋】
- 表面の中央に、包んだ金額を「金 壱萬圓也」のように旧字体の漢数字で書きます。
- 裏面の左側には、ご自身の住所と氏名を書きます。これはご遺族が後で整理する際に必要な情報となりますので、必ず楷書で分かりやすく書きましょう。
葬式で香典を渡すタイミングとスマートな渡し方
香典は、通夜か告別式のいずれかに持参します。
一般的には、会場に到着し、受付を済ませる際に渡します。
【受付での渡し方】
- 受付で「この度はご愁傷様でございます」など、短くお悔やみの言葉を述べ、一礼します。
- バッグなどから袱紗(ふくさ)に包んだ香典袋を取り出します。袱紗は、香典袋を汚さず、丁重に扱う気持ちを表すためのものです。
- 受付の目の前で袱紗を開き、香典袋を取り出します。
- 表書きの文字が相手から読める向きにして、両手で丁寧に渡します。
- 芳名帳への記帳を促されたら、指示に従い名前や住所を記入します。
袱紗は慶弔両用の紫色を持っておくと、いざという時に便利です。
もし袱紗がない場合は、ハンカチや小さな風呂敷で代用しても構いません。
裸のまま持参するのは避けましょう。
まとめ
今回は、葬儀の香典でピン札が避けられる理由と、その対処法、そして関連する基本マナーについて詳しく解説しました。
- ピン札は「不幸を予期していた」とされかねないため避けるのがベター
- 手元にピン札しかない場合は、自分で一度折り目を付ければOK
- お札は「顔を伏せて下向き」に、金額は「4」や「9」を避ける
- 表書きは「薄墨」で、渡す際は「袱紗」に包むのが丁寧
覚えることが多くて大変だと感じたかもしれませんが、すべてのマナーの根底にあるのは「故人を悼み、ご遺族を思いやる心」です。
その気持ちさえ忘れなければ、多少形式が違っていても、あなたの真心は必ず伝わります。
この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、故人と心静かにお別れをするための一助となれば幸いです。
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