突然の訃報に接し、故人を偲ぶ気持ちをどのように表せばよいか、戸惑うことは誰にでもあるかと思います。
特に、葬儀の場に飾られる「盛花(もりばな)」は、故人への深い哀悼と、悲しみに暮れるご遺族への慰めの心を伝える、とても大切な役割を担っています。
しかし、いざ贈るとなると「費用はいくらくらい?」「どんな花を選べばいいの?」「札名の書き方は?」など、次々と疑問が湧いてくるのではないでしょうか。
この記事では、そんなあなたの不安を解消し、心を込めてお悔やみの気持ちを伝えられるよう、葬式の盛花に関する知識とマナーを、一つひとつ丁寧に解説していきます。
葬儀に供える盛花(もりばな)とは?供花との違いも解説

葬式の知恵袋・イメージ
まずは、「盛花」そのものがどのようなものなのか、基本的なところから見ていきましょう。
盛花が持つ「故人を偲び、遺族を慰める」という意味
盛花とは、その名の通り、カゴなどの器に花を豊かに「盛った」アレンジメントのことです。
祭壇の両脇に飾られ、厳粛な葬儀の場を飾り、故人の冥福を祈るために供えられます。
色とりどりの花々が並ぶ様子は、故人が生前いかに多くの方から慕われていたかを物語り、それは残されたご遺族の心を温める、何よりの慰めとなるのです。
盛花を贈ることは、単なる慣習ではなく、故人への感謝と、ご遺族に寄り添う気持ちを形にする、心からの弔意表現と言えるでしょう。

親族の葬儀で祭壇に並んだ盛花を見て、故人が愛されていたことを実感し、胸が熱くなったのを覚えています。
「盛花」と「供花」は基本的に同じもの
「盛花(もりばな)」と「供花(きょうか、くげ)」、どちらの言葉も耳にしたことがあるかもしれません。
結論から言うと、葬儀の際に祭壇へ供えるカゴに入ったアレンジメントフラワーという意味では、これらは基本的に同じものを指します。
葬儀社や地域によって呼び方が違うだけで、どちらを使っても間違いではありません。
この記事では、より一般的に使われる「盛花」という言葉で統一して解説を進めますね。
枕花や花輪との違いとそれぞれの役割
盛花以外にも、葬儀で用いられる花にはいくつか種類があります。
混同しないよう、それぞれの違いと役割を整理しておきましょう。
種類 | 役割と特徴 | 飾る場所 | 贈るタイミング | 主な贈り主 |
盛花(供花) | 祭壇を飾り、故人を偲ぶ。葬儀の中心となる花。 | 祭壇の両脇 | 通夜の前まで | 親族、友人、会社など幅広く |
枕花 | 亡くなってすぐ、故人の枕元に供える。比較的小さめのアレンジメント。 | 故人の枕元(自宅や安置施設) | 訃報後すぐ | 特に親しい親族、友人 |
花輪 | 造花や生花で作られた大きな輪。屋外に飾られ、弔意を広く知らせる。 | 斎場の入口など屋外 | 通夜の前まで | 会社・団体関係が多い |
このように、それぞれ役割や飾る場所が異なります。
一般的に個人としてお悔やみの花を贈る場合は、「盛花」を選ぶのが最も一般的です。
【関係性別】葬式の盛花の費用相場はいくら?

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心を伝えるものとはいえ、やはり気になるのが費用の相場です。
安すぎても失礼にならないか、高すぎてもご遺族に気を遣わせてしまわないか、悩みますよね。
一般的な盛花の価格は15,000円~20,000円
葬儀用の盛花は、1基あたり15,000円~20,000円が最も一般的な価格帯です。
この価格帯の盛花は、大きさや使われる花の種類もちょうど良く、祭壇に並んだ際に見劣りしないため、多くの方が選ばれます。
1基(き)というのは、盛花を数える単位です。
通常は1基で贈りますが、特に親しい関係の場合や法人として贈る際には、対となる2基(1対(つい))で贈ることもあります。
親族(兄弟・孫一同など)から贈る場合の相場
- 相場:15,000円~30,000円
親族として贈る場合は、一般的な相場より少し高めの盛花を選ぶ傾向があります。
兄弟姉妹で連名にしたり、「孫一同」としてまとめて一つの立派な盛花を贈ったりすることも多いです。
友人・知人から贈る場合の相場
- 相場:15,000円~20,000円
ご友人や知人として贈る場合は、一般的な相場で問題ありません。
数名の友人で費用を出し合い、「友人一同」として連名で贈るのも良いでしょう。
会社・法人として連名で贈る場合の相場
- 相場:15,000円~30,000円(1対で贈ることも)
故人がお世話になった会社や取引先として贈る場合は、一般的な相場か、それ以上の価格帯で用意します。
会社の代表として贈る際は、見栄えも考慮し、1対(2基)で30,000円~という形で贈るケースも少なくありません。

値段も大切ですが、無理のない範囲で心を込めるのが一番です。ご遺族は金額よりもそのお気持ちを嬉しく思うはずです。
失礼にならないための葬式の盛花の選び方と基本マナー
ここからは、実際に盛花を手配する際の、具体的なマナーや注意点について詳しく見ていきましょう。
宗教・宗派によって異なる花の種類と色の選び方
盛花に使われる花は、宗教によって好まれるものや避けるべきものがあります。
- 仏式
- 色: 白を基調とし、紫や青、淡いピンクなどを加えるのが一般的。
- 花: 菊(特に白い輪菊)、百合、胡蝶蘭、カーネーション、トルコギキョウなどがよく使われます。トゲのある花(バラなど)や香りの強すぎる花は避ける傾向にあります。
- 神式
- 基本的には仏式と似ていますが、より白を基調としたシンプルな色合いが好まれます。榊(さかき)が使われることもあります。
- キリスト教式
- 色: 白が基本ですが、比較的自由で、洋花を中心とした明るい色合いも用いられます。
- 花: 百合、カーネーション、スプレーマムなど、洋花が中心となります。カゴではなく、クロス(十字架)やハートをかたどったフラワーアレンジメントが贈られることもあります。
もし宗教・宗派が分からない場合は、白を基調とした盛花を選んでおけば、まず間違いありません。
葬儀社に依頼すれば、そのあたりも全て配慮してくれるので安心です。
札名の書き方を徹底解説|個人・連名・会社・孫一同の場合
盛花には、誰から贈られたものかを示すために「札名(ふだな)」を立てます。
これが一番迷うポイントかもしれません。パターン別に見ていきましょう。
【基本】
- 肩書きは書かず、氏名のみを記載するのが一般的です。
【個人で贈る場合】
山田 太郎
【夫婦など連名で贈る場合(2~3名)】
- 目上(通常は夫)の名前を右側に書き、左に続けて名前を並べます。
山田 太郎
花子
【友人・兄弟などグループで贈る場合】
友人一同
兄弟一同
- 全員の名前を入れたい場合は、右から目上の順に並べます。人数が多い場合は「〇〇一同」とするのがスマートです。
【会社から贈る場合】
- 会社名のみ
〇〇株式会社
- 会社名+代表者名
〇〇株式会社
代表取締役 山田 太郎
- 部署などから贈る場合
〇〇株式会社 営業部一同
【孫一同で贈る場合】
- 故人から見た関係性がわかるように書きます。
孫一同

会社名や肩書きの書き方は特に迷いますよね。迷ったら葬儀社の方に相談するのが一番確実です。プロが丁寧に教えてくれますよ。
いつまでに贈る?通夜・告別式に間に合わせるタイミング
盛花は、通夜が始まる2~3時間前までに斎場に届くように手配するのが理想です。
なぜなら、葬儀社のスタッフが祭壇を設営する際に、届いた盛花の札名順などを考慮しながらバランス良く配置するためです。
あまりにギリギリだと、飾る場所がなかったり、配置作業が間に合わなかったりする可能性があります。
訃報を受けたら、できるだけ早く手配に取り掛かりましょう。
盛花の注文・手配方法|葬儀社に依頼するのが確実
盛花を手配する方法はいくつかありますが、最も確実で推奨されるのは、その葬儀を担当している葬儀社に直接依頼する方法です。
【葬儀社に依頼するメリット】
- 斎場のルールを熟知している: 持ち込み可能な花のサイズや種類、設置場所などを把握しています。
- 統一感が生まれる: 他の盛花とのデザインや大きさのバランスを考慮してくれます。
- 手間が少ない: 支払い方法などを確認するだけで、あとは全てお任せできます。
- 名札の間違いがない: 故人や喪主の名前を正確に把握しているため、間違いが起こりにくいです。
もちろん、懇意にしている花屋やオンラインショップでも手配は可能ですが、その際は斎場の住所や葬儀の時間、喪主の名前などを正確に伝え、盛花の持ち込みが可能かどうかを必ず事前に確認する必要があります。
家族葬などで供花を辞退された場合の対処法
近年増えている家族葬などでは、ご遺族の意向で「御香典・御供花・御供物の儀は固くご辞退申し上げます」と案内されることがあります。
この場合は、その意向を尊重し、盛花を贈るのは控えましょう。
無理に贈ってしまうと、かえってご遺族に気を遣わせ、負担をかけてしまうことになります。
弔意は、後日改めて弔問に伺ったり、お悔やみの手紙を送ったりするなど、別の形で伝えるようにしましょう。
盛花を贈る前に確認したい注意点
マナーを守って手配したつもりでも、思わぬところでご迷惑をかけてしまう可能性もあります。
ここで、他のサイトではあまり触れられていない、一歩踏み込んだ注意点をご紹介します。
遺族の意向を最優先する
どんなマナーよりも大切なのが、ご遺族の気持ちを最優先することです。
前述の通り、供花辞退の意向が示されている場合は、それに従いましょう。
もし判断に迷うことがあれば、葬儀社に問い合わせてみるか、親しいご親族にそっと確認してみるのが賢明です。
「贈りたい」というこちらの気持ちよりも、「受け取る側」の状況を思いやることが、本当の弔意と言えます。
斎場(葬儀場)のルールを確認する
自分で花屋などに手配する場合に特に注意したいのが、斎場ごとのルールです。
斎場によっては、外部からの花の持ち込みを制限していたり、サイズに規定があったりします。
せっかく手配した盛花が飾れない、といった悲しい事態を避けるためにも、葬儀社を通すのが一番安心なのです。
訃報から時間が経ってしまったら自宅へ送る「後飾り」を
訃報を知るのが遅れたり、どうしても手配が間に合わなかったりすることもありますよね。
そんな時は、葬儀後にご自宅に飾る「後飾り(あとかざり)」のアレンジメントフラワーを贈るという方法があります。
後飾りとは、火葬後から四十九日法要までご遺骨を安置する小さな祭壇のことです。
あまり大きすぎず、白や淡い色合いを中心とした、ご遺族の心に寄り添うような優しい雰囲気の花を選びましょう。
メッセージカードを添えて、お悔やみの気持ちと、葬儀に参列できなかったお詫びを伝えると、より丁寧です。
【喪主・遺族向け】いただいた盛花へのお返しは必要?
最後に、視点を変えて、盛花をいただいた喪主・ご遺族側の対応についても触れておきます。
基本的に盛花へのお返し(香典返し)は不要
いただいた盛花に対して、個別にお返し(返礼品)を用意する必要は基本的にありません。
盛花は香典と同じく弔意を表すものであり、そのお返しは「香典返し」に含まれる、と考えるのが一般的です。
無事に葬儀を終えた後、会葬御礼状などを送る際に、盛花をいただいたことへの感謝の言葉を添えるようにしましょう。
高額な盛花をいただいた場合の対応方法
会社関係からなど、明らかに高額とわかる立派な盛花(例えば1対3万円以上など)をいただいた場合は、少し対応が異なります。
この場合は、香典返しとは別に、後日改めてお礼状を送り、3分の1から半額程度の品物をお贈りするのが丁寧な対応です。
「お気遣い、誠にありがとうございました」という感謝の気持ちが伝わるようにしましょう。
まとめ
葬儀の盛花は、故人への最後の贈り物であり、悲しみに沈むご遺族の心をそっと支える、優しさの表れです。
- 盛花と供花は基本的に同じもの
- 相場は1基15,000円~20,000円が一般的
- 手配は葬儀社に依頼するのが最も確実で安心
- 札名の書き方や宗教ごとの違いなど、基本的なマナーを守る
- 何よりもご遺族の意向を尊重する
たくさんのルールやマナーがあり、難しく感じられたかもしれません。
しかし、一番大切なのは「故人を心から偲び、ご遺族に寄り添いたい」という、あなたのその温かい気持ちです。
この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、自信を持って故人をお見送りする一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
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